ペット椎名の観察記録 「花」 祐輔・著
キッチンでエッチをしかけてから、椎名の機嫌が悪い。椎名にとって、キッチンは「職場であり神聖なもの」というこだわりがあったようだ。綺麗なものを汚すのが楽しいんだと言ったら、もちろん更に機嫌が悪くなった。が、こればかりは慣れてもらうしかないだろう。我慢する気は更々ないのだから。といっても、無言の生活は堪える。恋人の機嫌を取るには「光り物」か「花」と相場は決まっている。もちろん、そういう女扱いされるのが、椎名は嫌いだと知っている。とりあえず、近くの花屋でガーベラの花束を作ってもらった。持って歩くのが恥ずかしくなるくらい可愛らしい出来に、椎名の嫌そうな顔を思い浮かべて、嬉しくなった。帰って渡すと予想通りの反応で、怒鳴り声とはいえ久しぶりに嬌声以外の椎名の声を聞けたことに満足した。あれから一週間。ダイニングに飾られたガーベラはまだ瑞々しく咲いている。俺に隠れて椎名が毎日水を代えているおかげだろう暇で、なんとな~く「観察日記」をつけてみました。実は花が嬉しかった椎名くんが可愛いっす。