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カテゴリ:その他
ここ数年、世界的に気候変動が激しいですね。
25度暑いと思うほどの気温の後は寒い!10度以下になるそう・・・ついて行かれへん! そんなこんなでつぶやき物語です。 ******************* 憂い 貴方に会えることを楽しみに過ごす日々。 師走の喧噪、巷に溢れる甘いクリスマス、新しい年の清々しい朝。 雪割草を見つけた喜び、梅の蕾・・あぁもう少し。 もう少しで凍える私を温かく抱きかかえてくれる貴方に会える。 「今年は寒さが厳しかったね。大丈夫か?」 突然後ろに気配を感じると共に耳元で愛しい人の声がした。 「えっ!あ・・・」そのあとの言葉は思いがけず早く会えた喜びで出なかった。 彼の温かい胸に抱かれて、かわりに出たのは白い頬を伝う涙。 「冬美に早くあえて嬉しいよ。ほら顔をあげて愛しい君を見せてくれないか?」 顔をあげると、優しく顎に指先を添え親指で頬の涙を拭ってくれる。 こんなに早く会えると思わなかったその嬉しさで気が付かなかった・・・。 彼は何故かやつれて見える。背にまわした手から感じるのは彼が痩せたということ。 「ど、どうしたの?痩せたわ」 「大丈夫なんでもないよ。ちょっと世界の流行に乗ってね」 柔らかな春の日差しのような微笑み。 変わらない彼の思いを感じまた涙がこぼれた。 「もう泣かないで、君の笑顔が見たい。デートしよう、何処でも連れて行くよ」 「たくさん連れて行ってもらったわ」 「うん。何処も君と一緒なら楽しいからね」 今年は近場を見て回ることに、そう初めての東京スカイツリー。 二人で展望台から大都会を見下ろし、遠くの山並みとその向こうに富士山の姿が見える。 「すごい!やっぱり高いわね」と彼を見上げると 彼はふと寂しげな表情をしていた。 「?」 「ごめん。あまり時間がないようなんだ」 「えっ!だってまだ会ったばかりじゃない。何かあったの?」 「ここ数年、君と会える日が早くなる・・・でもこうしていられる時間がどんどん短くなってきている」 「・・・嫌よ。貴方とこうして話ができる時を楽しみして・・・私は昔から明るくはつらつとした夏子さんに憧れていたわ。でも貴方の時間を短くするなんて!」 彼は小さく首を横に振った。 「彼女のせいじゃないよ。どうやら夏ちゃんも秋彦先生と会える時間が極端に短くなっているらしい。言っただろう世界的に気候変動が激しくなってきているんだ。日本の豊かな四季は世界に誇れるものだと言われていたけどね」 「春樹、私・・・嫌だから」周りに人がいるのも構わず春樹に抱きついた。 「うん」 彼はまわした手で私の背中をそっと撫でながら、つむじにキスをした。 寂しいのは私だけじゃないのだと分かっているけど彼の変化に胸が痛い。 何もかもが新しい喜びに溢れた彼の時を誰よりも愛しているのに・・・。 堅く抱き合う二人のガラス越し、遠く富士の向こうから生まれる夕焼けは刻々と色を変え 大都会に訪れる夜に節電の意味を忘れた幾億の灯が人々の止まらぬ欲望によって灯った。 (これは他で載せたものです) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.03.21 20:39:19
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