「買い物難民」って知ってますか?
JR水戸駅近くの坂道で、72歳の女性が息づかいも荒くカートを引いていた。糖尿病を患い、がんの手術もした。最近は手足が思うように動かず、ゆっくりとしか歩けない。自宅から一番近かった大型店「リヴィン水戸店」が3月に閉店。この日は、自分の足で約20分かかるスーパーに行き、食材や日用品を調達した。「転んだら大変」と、今は週に1度、ヘルパーに買い物を手伝ってもらう。生鮮食品は1週間もたないので、缶詰や冷凍食品でしのぐことも多いという。駅前のバス停では、重い買い物袋を手にした85歳の女性が、ベンチに座り込んでいた。駅ビルの食品店で買ったのはキャベツ、ナス、白菜漬け、豚肉など。「これで1週間過ごそうと思って……」。ひざが悪いので長く歩けず、自宅まで一区間バスを利用する。この女性にとって、買い物は大変な困難を伴う。水戸市では近年、県庁の移転や周辺地域の再開発で中心街の空洞化が進み、生鮮食品を扱う店が減っている。茨城キリスト教大講師の岩間信之さんは2006年、同市中心街に住む65歳以上の高齢者に食生活に関するアンケート調査(117世帯回答)を行った。それによると、自宅から普段利用する生鮮食品店までの距離は「1~3キロ」が47.3%と最多だった。買い物の回数は、46.2%が「週に1,2回」と答えた。岩間さんは「車が運転できず頻繁に外出できない高齢者は、日持ちする食品を買いだめして生活していることがうかがえる」と指摘。「生鮮食品店の減少が、高齢者の健康に影響を与えているのでは」と話す。高齢者の買い物の不便さと食生活の関連性については、独立行政法人・建築研究所(茨城県つくば市)の研究員、樋野公宏さんも指摘している。樋野さんは東大大学院生だった2000年、東京都板橋区で65歳以上の高齢者にアンケート調査(932人回答)を行った。自宅から普段利用する青果店などへの平均距離は733メートルで、1キロを超える人も多かった。その距離に不満を感じる人ほど、買い物に行く回数が少ない傾向も浮かび上がった。さらに、2日間で3食のいずれかを「食べなかった」という欠食率は、週に3回以下しか買い物に行かない人で8.3%と、4回以上行く人の欠食率4.9%を上回った。板橋区は比較的、買い物をしやすい環境で、樋野さんは「地方ではもっと厳しい状況の高齢者が多いはず」としている。◇1970年代~90年代半ばの英国では、ショッピングセンターの郊外出店で、都市中心部の中小食料品店の閉鎖が相次ぎ、車を持たない貧困層の住民に心臓疾患やがんが広がる一因として指摘された。この現象は「フードデザート(食の砂漠)」と呼ばれ、欧米で社会問題化した。岩間さんは、日本でも、車を運転しない高齢者にこうした問題が広がっているとして、「高齢者が身近な場所で食品を入手できるようにするという視点からも、行政はまちづくりを考えるべきだ」と訴えている。(2009年6月10日 読売新)昨年末、腰の骨を骨折、自転車に乗れない生活が続いている。今、困るのは、買い物に行けないこと。かつては、家から5分歩けば、肉屋、小間物屋、花屋、惣菜屋、豆腐屋・・・と生活に必要なものがなんでもそろう市場があった。何年も前に、市場は潰れて、それでも自転車でなら、10分もかからないところに、スーパーがある。今は、歩いて5分の八百屋に行くだけ。後、週に1回、歩いて10分ほどのスーパーに行くが、重いものは持てない。そんな時にテレビで観たのが、「買い物難民」という言葉。今の私には、ぴったりのテーマだった。「買い物難民」=「フードデザート(食の砂漠」を作ったもの。それは、郊外に移ったスーパーマーケット。それを可能にしたのは、車社会だ。生鮮食品を入手しづらく缶詰、冷凍品でしのぐ高齢者は、栄養不足になって、余計に体を悪くする弱者たち。しかし、車に乗れない人やこれから乗れなくなる人のことを考えると「買い物難民」は人ごとではない。私だって、12月の29日までは、こんな日が来るなんて思ってもいなかったのだから・・・。■買い物難民 対岸の火事ではない(1月31日付) ■・・・・・・・・・・・・・ ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。★11月19日*「オリヲン座からの招待状」に見る昭和*・・・・・・・・・・・・・・