あたらしい野生の地 リワイルディング★命
■あたらしい野生の地 リワイルディング■これは地球再生のプロローグオランダの首都アムステルダムから北東50キロの海沿いにある6,000ヘクタールほどの小さな自然保護区“オーストファールテルスプラッセン”。元々ここは、1968年に行われた干拓事業の失敗で放置された人口の土地だった。ところが、それから10年が経過すると、沼は水草で覆われた湿地帯へと変化。おびただしい野鳥が集まり、その鳥たちが整えた水際にキツネなどの小動物も現れるようになった。自然が緯度や日光、降水量、地形、土壌といった自らの摂理に合わせて、元の動植物相を回復し始めたのだ。ここで最も目を引くのが、美しいたてがみを揺らして草原を駆ける馬の群れだ。リワイルディング(=再野生化)の試みとして放たれたヨーロッパ原生種に最も近いと言われるコニック種の馬たちが、環境に適応し、順調に数を増やしてきたのだ。今では2000頭を越える数が確認されている。同時期に放たれたアカシカも繁殖に成功。また鳥類では、17世紀以来ヨーロッパ大陸では目撃されたことがなかったオオワシも姿を見せるようになった。いま世界中で注目を浴びる“リワイルディング(=再野生化)”とは、ある土地の失われた生態系を復元するあらゆる試みを指す。野生では絶滅した動物種を再びその土地に導入するといった例はもちろん、人間がある土地から手を引いて見守る行為と自然の復元力に立つ新たな生態系の構築など、様々な方法が試みられている。人が手放した土地で、いかにして生態系が回復していくのか。ゲートで囲まれ、大半が非公開区域となっている“オーストファールテルスプラッセン”では、植生がどう移り変わり、どこにどんな動物が戻り、どのようにして他の動植物たちとの関係を作っていったのか。そのプロセスが明らかになる。さらに、自然の素晴らしさのみならず、自然と人間が共存する持続可能な未来をも想像させてくれる。*舞台となる自然の楽園は、もともと人間が使おうとして埋め立てられ、そして人間の都合によって捨てられ、忘れられた場所だった。東京から50km離れた場所、例えば千葉県船橋市、神奈川県横浜市あたり、6000ヘクタールという広さは東京の大田区とほぼ同じ面積だ。そうした場所