テーマ:日本の古典文学は面白い(91)
カテゴリ:詩歌・名文
「 遺愛寺の鐘は枕をそばだてて聴き、 香炉峰の雪は簾をかかげてこれを看る 」 (訳) 遺愛寺の鐘の音は臥したままマクラを斜めに 立てて聴き入り、 香炉峰(山)に積もっている雪は簾を巻き上げて眺めている。 ■イラスト付き香炉峰(こうろほう)の雪■ 昨年■11月22日(水)■に行った鳥取県・智頭(ちづ)の ■石谷家住宅■は【国指定重要文化財】。 その家の一番いい部屋が写真の部屋。 一緒にガイドさんの説明を聞いていた女性3人が、この部屋にはいると 「わー、御簾(みす)のある部屋!! 『香爐峰(こうろほう)の雪は簾(すだれ)をかかげてこれをみる』」と言った。 御簾のある部屋を見て、清少納言の有名な「枕草子」が出てくるなんて・・・。 私も『香炉峰の雪』は知っていたけど、とっさに出てくるなんて、この3人組の女性は、国語の先生なのかな・・・? 「香炉峰の雪」と言われた清少納言が、とっさに簾を上げ、女房たちに感心されたように、 簾を見て「香炉峰の雪」と言った女性たちに私はいたく感心した。 山深い鳥取・智頭(ちづ)は、雪が沢山積もっているだろう。 雪のいと高う降りたるを例ならず御格子(みかうし)まゐりて(参りて)、 炭櫃(すびつ)に火おこして、物語などして集まりさぶらうに、 「少納言よ、香炉峰(かうろほう)の雪いかならむ。」と仰せらるれば、 御格子上げさせて、御簾(みす)を高く上げたれば、笑はせたまふ。 人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。 なほ、この官の人にはさべきなめり。」と言ふ。 ■現代語訳■ 雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って、御格子(みこうし)をお下ろしして、角火鉢に火を起こして、(私たち女房が)話をしながら、(中宮様のもとに)集まりお使えしていると、 (中宮様が私に呼びかけ、) 「少納言よ、香炉峰(かうろほう)の雪は、どうなってるかね。」とおっしゃるので、御格子を(ほかの女房に)上げさせて、御簾(みす)を高く(巻き)上げたところ、 (中宮様は満足して)お笑いになる (他の女房の言うには)「(私たちも)そのようなこと(=白居易の詩のこと)は知っており、歌などにまでも詠むけれど、 (とっさには)思いつきませんでしたよ。 (あなたは)やはり、中宮様にお仕えする人として、ふさわしいようだ。」と言う。 「 遺愛寺の鐘は枕をそばだてて聴き、 香炉峰の雪は簾をかかげてこれを看る 」 (訳) 遺愛寺の鐘の音は臥したままマクラを斜めに 立てて聴き入り、 香炉峰(山)に積もっている雪は簾を巻き上げて眺めている。 * 「香炉峰の雪」とは 中唐の詩人、白居易の『白氏文集』に出てきます。 平安時代の貴族は広く漢詩を愛読していたのでした。 ■元詩■ にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.01.20 16:34:49
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