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臨床の現場より

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 前回のエントリーで当ブログの記事が200を越えました。なんとなく続けているこのブログも、長く時間が経ってくると過去の記事をまた掘り起こしたくなって来ます。新しいエントリーに埋もれてしまっているものの、自分自身が気合を入れて書いたものや、読者の皆様に比較的多くコメントをいただいたものがあり、ここらで少しまとめてみます。(長く読んでくださっている方はお目にしたことのある記事です。目新しくなくてすみません)

2007.11.12~2007.11.17の連作日記 「なぜ忙しい?」

 head&neckの専門は腫瘍ですが、週のうち1回は初診外来、2回は一般外来、そして腫瘍専門は一日だけです。つまり、外来の3/4は一般患者さんを診察しているわです。むしろ自分の専門分野のみを診ていればいい医者は少数派で、ある程度の幅をもって外来診療をすることは日本では普通のことです。制度としては諸外国から遅れていますし、医療資源の無駄遣いであるのは明白ですが、悲しいかな現場のマンパワー不足と、国の無策のせいで一向に改善されません。
 とにもかくにも、月曜日は朝から初診外来を始めます。一応大きな病院なので、それなりに紹介患者さんも多く、病院でないと対応できない患者さんが大勢受診されるのです。・・・が、実際、「なんで?」と首を傾げざるを得ない患者さんも大勢お見えになります。
ここで、head&neckが診察した本日の患者さんの内訳をごらんいただきましょう。

総初診患者数:38名 そのうち、紹介状を持参された患者さん18名。内訳は、
 CT、MRI等、病院でないとなかなか難しい検査を予約した患者さんは10名。
 処置が必要であった緊急疾患(鼻出血など)1名。
 入院の適応1名。
 手術目的の患者さん4名。

つまり、18名のうち16名、89%の方が病院での医療を必要としたと考えられます。

一方、紹介状を持たず、いきなり外来に来られた患者さんは20名。
 このうち診察のみで次回予約なしの疾患(のどの違和感、前からの耳鳴り、難聴等)6名。
 軽い処置のみ(耳垢清掃、鼻清掃等)3名。
 処方は近医で充分可能なもの(風邪、アレルギー性鼻炎、軽度中耳炎、湿疹等)9名。
 近医通院中だが不安になって来院されたもの2名。

入院、検査の適応は、なんと一人もいませんでした。

 もちろん紹介状なしでも、病院でしか対応できない疾患や重症患者さんがお見えになることもあり、本日はそれが無かっただけなのですが、今日のような外来患者構成になる日は多く、このことは開業医の先生がいかに真面目であるか、また、きつい言い方ですが素人とプロの判断がいかにかけ離れているかを証明しています。「だからこそより良い検査機器のある病院にかかって安心したい」という言い分も理解は出来ますし、そういう不安を解消するために医療がある一面は否定しません。しかし、現場の業務量の増大に反する、日本の医師数の少なさはそれを許容できないところまで来ています。日本の医療は、「いつでも誰でも医者にかかれて、すべて保険で賄う」ことを建前として来ました。世界でも類を見ない、患者さんのためにはすばらしい制度と思います。ところが、ここ10年ほどの間に、この建前を重視しすぎたために現場と理想が激しくかけ離れたものになってしまいました。そろそろ抜本的に構造を変えなければ早暁、医療は崩壊しかねないところまで現場の医師、コメディカルが疲労し、厳しい現場から労働力が逃げ始めているのが現在の姿です。
 限られた医療資源を有効に使うためには、「不安の解消」よりも、「疾病の解消」に投資しなければなりません。この考え方を突き詰めていくと医療機関へのアクセスの制限となります。
 医療行政のあり方について、官僚、政治家、民衆という3つの立場を考えてみました。
 まず、官僚というのは現状制度の維持に頭を使うもので、枠組みを外して組み替えることは思考の外にあります。もっと言えば、彼らにとって制度こそが正義であり、人道的であれ制度の枠に入らないものはすべて悪で、時に罰則さえ作ろうとします。昨今の混合診療をめぐる裁判でもわかるように、新しい知識や方法を速やかに吸収することに極めて腰が重いのです。制度が正しければ、これを遂行する官僚の厳正さは歓迎すべきものですが、時代遅れと思われる制度の中にあっては自覚なき悪障害になるのです。
 次に、政治家は選挙で選ばれますから、世論に弱いという弱点を持っています。ここでいう世論というのは、患者と置き換えても良いでしょう。医療者にくらべ、患者が圧倒的多数であることは言うまでもありませんから、多数におもねる判断をしがちです。患者にとってみれば、いつでもどこでも病院にかかれたほうが良いに決まっていますから、なかなか患者の耳に痛い政策はだせません。現場の疲労を無視した夜間救急の命令が出たりするのはこのためです。真の政治家とは、先を見極め、国のこれからを考えて発言をするはずですが、なかなか選挙というハードルが怖くて踏み込めない人間が多いようです。
 最期に、患者ですが、これは自身の命がかかっていますからその要求は切実です。健康と命に対する欲求は生物の本能で、本能の赴くままに医療機関を利用できる現状の制度は便利なものです。それをマスコミが助長し、不可能を可能にするかのような医療万能の幻想を書きたて、無理な要求をするモンスターペイシェントまで散見されるようになってきつつあります。
 こうして考えてゆくと、上の3者のエゴイズムをすべて医療現場に押し付けてきた結果、現場が今のように殺人的な忙しさに陥ったと考えることが出来るでしょう。
 ここまでは、医療側からの意見をあえて差し控えていました。実際に医療者の意見は政府、社会に黙殺されて来ているのです。例えば泥棒が泥棒を取り締まる法律を作ってもろくなものが出来ないのと同じで、医療に携わるものが医療の制度を作ると、どうしても医療者に有利な仕組みになってしまうという意見もあります。さらには、我々は学生の頃から「医師、医療は患者のことのみを優先し、その他のことは度外視すべき」という理念を叩き込まれています。従って日本の医師たちは、社会的な動きをすることに慣れていません。
 しかし、現在のような状況になって、医療者側も、ただ黙って耐えているだけでは誰も助けてくれないことに気づき始め、多数の医師がブログ等、インターネットで自分の意見を主張し始めているし、逆に現場から逃散する医師もいます。私自身は、現場の医師の主張として、これまでなされなかった医療制度についての提言をするべきではないかと思っています。
 現在、「診療報酬改定に関する私案」に関しては独自の考え方を持っていますので、掲示します。(あくまで総論的なもの。各論は議論、加筆の必要があります)
 
1.国民皆保険は基本的に維持。ただし各医師の裁量権を拡大する。
・現行の医師技術料は一律で、医師の技量による差はない。これを改める。
手術、GIF CF等の内視鏡検査、心臓カテーテル検査等、医師の技術により差がでるものは、 術者の裁量により規定点数の50%~200%の範囲で点数を決めることができる。ただしこの権利を有するのは各学会が定めた専門医に限る。保険で賄うのは規定点数の7割(現行の値段)
・外来初診料、再診料についても、現行の規定点数の50%~200%の幅で裁量を持たせる。裁量権は各医師に帰する。手術料、外来基本料のうち、ある一定の割合をドクターフィーとして各医師に還元する。
ただし、一律に高率の点数を付ける医師については手術、外来についての監査が必要。(これは第三者機関を設置)1年間の請求点数のうち、6割は規定点数でなければならないものとする。6割を超えるものに付いては、やはり監査が必要。不適当と思われる場合には罰則を設ける。(特殊な疾患ばかり来る施設があるという意見に対しては、疾患に対しての点数上の優遇でもって対応し、施設として特例を認めることはしないのが望ましい)
・入院に対する診療報酬については、医療の部分で現行の制度を維持。
2.各医師の治療成績、診療報酬の公表
・専門医制度は現在ほぼ有名無実の肩書きであるが、これを改める。専門医を称するためにはある程度の治療成績、自分の技量にたいする評価が必要である。一般に判りやすくこれを数年に一度公表することを義務付ける。治癒率等は対象疾患によりバイアスがでるため、一案として、上記の制度が施行された場合、自身の手術料金、検査料金、専門外来基本料金を数年ごとに公表する。 
3.救急に関しては、時間外料金は原則として患者自己負担。ただし入院が必要な疾患や、救急対応が必要と医師が認定した疾患に関しては保険診療が適応される。(これらには一応のガイドラインというか、適応疾患をあらかじめ規定する必要があろう)
4.医師法にある応召義務を改める(正当な理由があれば診療を拒否することができる)

これらの基本路線に、いわゆる悪徳医師を排除する罰則を適宜設けて行くことが必要
 
 しかし、このような案を制度に反映させる場は、現在、医療側は持っていません。医師会とは、実質は開業医の利権団体で、医療全体を見据えた意見を集約する能力も意志もありません。経済界や建設業界には諮問会議、農家には協同組合があり、それなりに機能していますが、医師が現場の窮状を訴えるための団体は無いのです。
 医師の側から忙しさや現場の厳しさ、待遇の悪さについての意見を述べると、「それでも医者か」「税金で賄ってもらっているからやるのはあたりまえだ」「じゃあなぜ医者になったんだ」「庶民はもっと忙しくて貧乏だ」という反論が必ずといっていいほど出てきます。いちいちご尤もで、我々自身、そう思っているからこそここまでの悪待遇に文句を言わずに頑張ってきました。医師という職業はやりがいがあり、患者さんが感謝さえしてくれさえすれば、かなり厳しい状況でも耐えられるのです。しかしながら、耐え切れなくなった医師が出始めている事自体が、現在の現場が医療崩壊の一歩手前であることを暗示しているのです。

 あなたがサラリーマンなら、良い仕事が出来たとき、まわりに「出来て当たり前」といわれてうれしいですか?
 あなたが専業主婦なら、「養ってもらっているから、子育てと家事は完璧にこなして文句を言うな」と言われて当然ですか?
 あなたが公務員なら、「税金で養ってもらっているから、24時間働け」といわれてできますか?
 あなたが自営業なら、「お金がもうかるのはけしからん。悪徳商人だ」と言われて納得いきますか?
 あなたが職人なら、いい仕事でも悪い仕事でも値段が同じでやる気がでますか?
 医師は、「成功して当たり前で、完璧にこなせて文句を言うことは許されず、保険診療は税金から賄われるため、勤務医は24時間利用することを求められ、開業して少しでも余裕ができると悪徳医師と呼ばれ、仕事に対する料金は上手下手に関わらず同じ」なのです。

 そういったことを、よく考えて欲しいのです。
医療現場の忙しさは、明らかに医師の数が少なすぎることが原因です。そのせいで医師、看護師はぎりぎりまで働き、それでも患者さんに満足のいく治療が行き渡らない。その責任を、目の前にいる医療者にぶつけることは厳に控えていただきたい。諸悪の根源は医師数を抑制し、医療費を抑制し続けている厚労省、財務省、国にあるのです。

 本来、医師と患者は、共に病気と闘う仲間であるべきです。我々医療者は患者さんを大事にする精神を持っています。ただし、無尽蔵ではありません。不足している医療資源を、もっとも困っている患者さんから順に注入せざるを得ない状況を、一人でも多くの人に知っておいて欲しいと思うのでした。
 

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最終更新日  2008.10.19 23:23:24
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