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 その日、私はいつものように夜遅くまで実習室にこもり解剖をしていました。人気の少なくなった夜10時ごろ、そろそろ切り上げて同級の仲間と軽く食事して家に帰ろうと大学を出ました。
 学生の行く外食店はいつの時代も安くて量が多いお店です。今でもはっきりと覚えているそのお店は、長崎から出てきたご夫婦がやっている定食屋で、ご飯とみそ汁はお代わり自由でした。遅い時間もやっているので、仲間たちはかなりの頻度でこの店を利用し、おかみさんは私たちの顔をしっかりと覚えている方でした。
 私は、仲間と一緒の時も、彼女と一緒の時もよくこの店で食事をしました。この夜、お店に入ると、おかみさんが私に走り寄って来ました。

「あんたの彼女が夕方に来たよ。なんでもしばらく来れないって言っていたけど。どうかしたのかい?」
「え?全然しらないけど・・・何時頃ですか?」
「ええと、5時過ぎだったかね。男の方と一緒だったけど。」

 私は不安になり、食事もせずに店を飛び出しました。急いでアパートに戻りましたが、電気は消えており、人のいる気配はありません。鍵を開けて、部屋の明かりをつけました。

 もちろん、彼女の姿はありません。
 たくさんあった彼女の荷物も、全て無くなっていました。
 いつも使っていたテーブルの上に、私の好物メニューの夕食が並べられていました。
 その横には、彼女の字で一言だけ書かれた小さなメモが置かれています。

「永遠に愛しています」
 
 彼女が持っていたアパートの合鍵は、郵便受けに入れてありました。


次回に続きます。





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最終更新日  2010.09.24 20:45:01
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