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カテゴリ:その他
私は、あまりにも唐突な状況に戸惑い、うろたえ、おびえ、悩みました。
冷静さはどこかに消え失せてしまいました。もともと彼女が住んでいたアパートに急いで行ってみても、真っ暗で鍵は閉まっています。私は彼女の部屋の合鍵は持っていなかったので、中を確かめる方法はありませんが、少なくとも人のいる雰囲気は全くありません。 夜も遅いというのに、彼女との共通の友人数名に電話をしました。今のようにメールのない時代、夜11時をまわり、迷惑この上なかったでしょう。相手が寝ぼけ声の状態が4人目くらい連続して続いた時だったでしょうか、ついにあきらめてその日に電話で探すのはやめました。 とはいえ、眠れるわけもありません。いてもたっても居られなくなり、近場で彼女と行ったことのある場所は全て捜しました。公園、街中の遅くまでやっている飲み屋、海辺、彼女の好きだった道端の桜の木・・・・どこにも痕跡はありませんでした。 一睡もしないまま、夜が明けました。翌日も、大学はありましたが、ちょうど解剖学の実習はほぼ終了し、後は講義のみを残す状態となっていたのは幸いでした。とても勉強は身に付きません。講義終了と同時に大学を飛び出し、あてどなく彼女を探しました。 解剖学の試験が近かったので、勉強しなくてはならなかったのですが、とても手につきません。教科書や過去問を開いても数分すると上の空で、気がつくと時間だけが過ぎ去っていました。彼女がいなくなった日と、前日の様子を何度も何度も、どこかにヒントがなかったか思い起こしては否定し、また思い起こすということが続きました。結局私が最も気になったのは、 「体調が悪いから病院へいく」という彼女の言葉 「男の人と一緒だった/しばらくこれないと言っていた」というおかみさんの言葉 「永遠に愛しています」という彼女のメモ でした。 最初は、彼女が病院にかかると言ったので調べようとしましたが、何処の病院を受診したかさえ分からず、さすがに、学生で何のつてもなかったのでこれを調べることはできませんでした。すると、おかみさんが言っていた言葉が気になります。 男の人と一緒で、しばらく来れないと言うことは??もしかして他に好きな人ができたのだろうか?そんなそぶりはなかったし、このところ忙しくて一緒に出かけはしていませんでしたが、少なくとも一緒に暮らしていた様子を思い出してもそんな様子はなかったし、それにあんなメモを残すはずもない。じゃあ親に強引に見合いでもさせられて連れ戻されたのだろうか?それならしばらく来れないと言うのも納得が行く・・・ 思考は、止めどもなく続き、眠れぬ夜が続きました。解剖学の試験は散々で、見事に追試験にかかり、気分転換もできぬままに惰性で勉強をして追試を受けました。進級なぞ、どうでもよくなっていました。 3月の初め、解剖学の追試の発表をみて、ギリギリの成績で何とか及第したことを知ったその翌日、私のアパートの郵便受けに、一通の封書が届いてました。 もう少しだけ続きます お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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