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カテゴリ:演劇
白井晃演出『偶然の音楽』は現代アメリカ小説の旗手オースターの小説を舞台化した作品。親の莫大な遺産を手に入れ、離婚したナッシュ(仲村トオル)は仕事を辞め、車で一人旅に出る。心残りは残して来た一人娘。その途中で天才的な賭博師のポッツイ(小栗旬)と出会う。ナッシュはそのポッツイに賭け、全財産を失う。その償いのために重い石を積む作業に励み、借金を返していく。ポッツイはその場から去り、その作業を一人で成し遂げたナッシュはやがて自由を得るが・・・。
白井さんはあえて、こうした難しい作品を舞台化したいのだ、と言っている。「日本は子ども文化になってしまった」と感じているそうだ。この芝居には絶対必要だったそこに居る存在感のある仲村トオルと、人生を惑わせるのに許せる小栗旬、配役にこだわったのがとてもよくわかる。仲村さんは何かを含みを持った役者さんで、小栗くんはちょっとシニカルなそれでいて繊細な姿が心に引っかかる青年だ。 アメリカに限らず、日常の閉塞感から希望を見出して行くのは大変な世の中かもしれない。現実が必然だと思えない時もあるし・・・。きっと変わらないように思える日常の隣りにしか本当の自由はないのだけれど。 考えても答えがひとつじゃない芝居も面白い。原題は『The music of chance』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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