なんでもない風景が心に残る。
小栗くんお薦め「歩いても歩いても」を観てきました。シネコンではない小さな映画館、少し鄙びた受付にフラットな座席。なんだか、この映画にぴったり(笑)。海べりの、坂の多い町が舞台でした。兄の命日に、年老いた両親の家に集まる姉と弟。とにかくお母さんはよく動く人で、作るお料理も昔ながらのものだけどとても手早くて美味しそうでした。枝豆と茗荷のごはんとか、とうもろこしの天ぷらとか。お母さんと娘、お父さんと息子、お母さんと息子、お母さんと嫁、お父さんと孫。色んな関係が様々に絡み合っていて、本当は不満はないんだけど、ちょっと棘のあること言ってみたり。心配なのにぶっきらぼうになったり。こういうことってあるよね、という感じが時にユーモラスに描かれていて、しみじみ面白かったです。特に、お父さんと孫の間になんとなくの絆が生まれる感じとかがよかったなあ。溺れてるよその子を助けるために長男は亡くなったのですが、毎年、命日にお参りに来るんですよね、大人になったその子供が。「来年も来てくださいね」っていうお母さんの、その裏にある気持ちが痛いほどわかりました。1年に1日ぐらい辛い思いをしてもいいじゃないの、っていうその気持ちが。理屈じゃないんですよね。そして特に何事もなく、その2日間は終わります。特別な事件も大きな喧嘩も何も。最後の阿部ちゃんの語りにじんわりし、ああ~脈々と受け継がれていってるんだなあっていう思いで映画は終わりました。この映画とか「天然コケッコー」とか「めがね」とか特別たいした事は起こらないけど日常を丁寧に切り取ったような映画って、結構好きかもしれません。