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このころは当然のごとくAIが進化した時代である。AIという道具の全盛時代、PAI、個人の持つAIによって仕事ができるできないが決まる。PAIの能力によって個人の収入が変わるということである。個人に能力があるかどうかではなく、能力のあるPAIを持つことで個人の評価がされる時代なのである。だから、個人は有能なPAIを持つために競うことになるし、企業はAIを進化させることにしのぎを削るのである。 社会格差は21世紀当初よりさらに広がっている。支払う税金によって社会階層が分かれている。全人口の数%の人が、税金の90何パーセントかを払っている。この超上層の人たちがAIを使って世の中を統制しているのである。官僚はいても大臣はいない。納税は義務ではない、自由である。しかし、納めた金額によって所属する階層は決まる。 e-SPORTSが花盛りである。e-SPORTSといってもバーチャルな画面で戦うものばかりではない。ロボット同士が試合をするサッカーや野球、バスケットといったものがある。その種類、戦い方はさまざまである。そしてどの競技もギャンブルの対象である。人間は寿命が延びて暇だから、ギャンブルにのめり込むのである。人間が力を競い合っていたオリンピックは今はない。4年に一度おこなわれるのは、e-SPORTSの全アメリカ圏大会である。その盛り上がり方はここであらわすことはできないだろう。すべてが賭けの対象、巨大なマネーが動く。そのお祭り騒ぎ、試合の敗者と勝者、賭けの勝ち組と負け組、すべてが興奮のるつぼの中に放り込まれる。e-SPORTSとギャンブルで世の中は成り立っているといっても過言ではない。確かに寿命は延びた、その分いのちの値打ちも変わるのである。 人間は生まれてくるとすぐに識別コードが体内に埋め込まれる。その人間に関するデータはすべて体内のマイクロチップにINPUTされ、必要に応じてOUTPUTできるようになっている。このチップがないと、生まれたての赤ちゃんをのぞいて、存在者と認められない。また身体も薬や補助器具によって改造される。生きていくのに生まれたままの身体であることがめずらしいのである。タトゥーを入れるような気楽さで、体を改造するのである。 そういった環境におかれたマリエはほんとうに珍しい存在といわなければならない。識別のチップが入っていない、体のどの部分も加工された痕跡がない。そんな純粋人間は意識してつくりあげなければ存在しえないのである。今の時代に普通のことが、この時代になると特殊なことなのである。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.06.06 17:32:48
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