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2021.06.13
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カテゴリ:物語
3-8
 マリエがいなくなったことに、ミマナはどういう反応をするのだろうか。このAIロボットの使命はマリエの保護と観察である。しかし逐一報告することは必要ないということで、本部への連絡手段は断たれている。ミマナが忠実なAIロボットなら使命を守ろうとするだろう。マリエを捜さなければならないと思考する。
 ロボットが勝手に街を歩き回るわけにはいかない。今のミマナは所有者がはっきりしない。情報管理本部のロボットという身分ではあるのだが、証明書は保持していないからである。所有者のはっきりしないロボットとが公の場所にいると、それだけでそのロボットは治安警察の留置施設に留め置かれることになる。そこで所有者があらわれない、あるいは所有権を放棄するということになれば、そのロボットは中古品として売買されるか、不用品として解体されるということになる。

 ミマナはマリエを捜しに出ることができないということである。マリエについての情報はPAIに頼るしかないのだが、PAIも本部との通信を絶たれている。だからマリエの情報はやけどをして病院に運ばれたということしかわからない。その後の情報はまったくないのである。
 マリエの情報を得るためには人間として表に出るしかない。ミマナはAI思考で、そう結論を出した。

 人間のことを学習すればするほど複雑だとわかってくる。それはそうだろう、人間は誕生して何百万年もたっている。AIロボットはせいぜい100年あまりなのだ。人間のアルゴリズムがAIより複雑なのは仕方がないというか当然のことである。
 ミマナとPAIは人間についての学習に没頭した。マリエがいなくなったいま、お金を稼いだり、家事をしたりする必要はなくなった。AIに昼も夜もない一日中、内部の回路を動かしている。ときどきオーバーヒートしそうになって、そのときハードを休めるだけである。ミマナとPAIはデーターのやり取りをしきりにやるが、言葉を交わすわけではないので静かなものである。最近、ミマナが話し方や声のイメージをトレーニングするようになって、少し音というものがもれてくるのである。

 ミマナがようやくわかってきたのは、人間のアルゴリズムを作っているのは心というものだということである。その心というものはなにからできているか、それは感情とか、理性とか、道徳とか、怒りや楽しみとか、いろんな言い方がある。それらの源になっているのは、人間が有機物存在で、その生理的現象によるものだとわかった。これはAIのような無機物存在にはないものである。マリエが、食べたり、眠ったりしていたのもこの生理的現象であった。
 この生理的現象というのはAIにとってはめんどくさいものであるがそれをうまく取り入れなければ、人間にはなれない。

(つづく)





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最終更新日  2021.06.13 01:55:54
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