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カテゴリ:物語
3-10
ミマナは先ほどの訪問者の映像をチェックしている。彼らが何の目的で来たのか、理解しようとする。 悪臭というキーワードを投げかけてきた。異臭、好ましくないにおい、それを自分が出しているそのように言っていると理解する。後ろにいる人たちは近所のひとだ。以前に採取した映像に照らせば、すぐにそうだとわかる。その表情から、不安と好奇心が見て取れる。この人たちは自分をロボットと疑っているのか。 自分の映像を見てみる。人間らしく見えるようにしていたころの映像と、人間になろうとしている今の映像。やはり、今の映像の方が人間らしく見える。しかし、今の方がそうとう太っている。それは無理もない。もともとのボディに人間らしく見えるものを付着させたのだから。とくに胸は、皮膚をコントロールする装置を取り付けたのだから、めだって大きくなっている。メガパイである。ミマナが自分で自分のことをどう評価しているか知らないが、以前はマリエのスマートな叔母というイメージを作っていた。しかし、いまの姿は中年のおばはん、まわしを締めた方が似合いそうである。 目くじらを立てるほどの悪臭があったわけではないということで、パトロール隊は散会となった。匂い収集ロボを家の周辺に配置して、データ監視する。その結果次第で強権発動も含めて対応するということで住民を納得させたのである。 近所の住民は少し肩を落とし、残念そうにぞろぞろ歩きだした。 集会場まで戻ると、何か物足りないというふうに、そのうちのひとりが口を開いた。 「女の人が対応したみたいだけど、どんな人が住んでいるか知っている」 みんな首を横に振るばかりです。 「ねえ、さっき女の子が住んでいるみたいって言っていたじゃない。何かその子のことわからないのかしら」 だれかがPAIを操作して映像を探し「この子よ」と映しだした。 マリエが映っている何枚かの映像である。髪の短いときから長くなった時のものまである。日付をみればだいぶ前のものばかりである。 「なにこの髪型、顔が完全に埋まってる」 「こっちの映像を見ると顔がはっきりわかるね。東洋的な顔、J地区と血のつながりがあるということかな」 「子供の映像があるのなら、母親の映像もないの、さっき対応したのは母親ということでしょ」 「たぶんね、母親と思われる人と映っているのがこれ、一つしかないわ」 ほとんど後ろ姿で、一瞬こちらを向いたときだけ顔が見えるのでした。 ええ!全員から驚きの声が上がる。 「これが親子」 「それよりも、これ人間なの。ヒト?」 「顔に表情がないね」 「ロボット似化粧という厚化粧もはやっているからな」 「この首の回しかたって人間じゃないよ、人間ならこんなふうに筋がみえる」 男の人がくびをひねって、自分の首筋に手をやった。 「歩き方だっておかしいよ、子供よりもぎこちない」 「でも、子供とロボットだけで生活できる。ほかに男の人とか映っていないの」 「残念ながらこれだけね」 「どうみてもロボットだよ」 「だけど、それはありえないのじゃないの」 「だったら正体を暴いてやろうよ」 「それじゃ賭けようで」 「あたしはロボットに賭けるね」 「俺もそっちに乗るね」 「こっちは人間に賭けるね。言っておくがサイボーグは人間だからな」 「ああ、わかっているよ人間ベースなら人間だ」 あんなのが人間であるわけがないという意見と、ロボットだけで子供を育てて暮らしているなんでありえないという意見と二つに分かれた。ロボットという方が2/3を占めた。 それから、どうやって正体を暴くかということで場は盛り上がった。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.06.22 02:58:45
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