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カテゴリ:物語
3-13
「マリエ、きょうは3バスやる、こっちのスペース」 マリエはすっかりこの先生になついていた。 仕切りの向こうに、先生の後についていった。大きなスクリーンが正面にある。 「先生3バスってどんなゲーム」 マリエの声ははやる心でうわずっていた。 「3対3のバスケット、いまから説明する」 先生の説明する声が、だれもいない部屋に響いた。 説明を聞きながらマリエは、ふと思った。この先生は女なの男なの。 「わたしときみがが戦う。仲間はバーチャルの選手がお互い二人、身長差があるから、背の高い方がきみのチーム」 マリエは頷いた。 「バーチャルの選手はパスを受けたり返したりするけど、シュートはしない。シュートをするのはわたしたちだけ。それとバーチャルの選手はこちらの指示で動く、手や足、それに顔の動き、目だけでも動かすことができる」 バーチャルの選手を動かす練習をした。 「なかなか呑み込みが早い、それじゃ試合」 マリエと先生はコートの中で激しくボールを奪い合い、シュートを競い合った。先生はときどきプレーを止めて、マリエを指導することも忘れなかった。 小さなマリエの体と大きな先生の体が交差し、ぶつかり合った。マリエは巧みに体をかわすこともできるようになった。。コートには汗が飛び散った。ゲームオーバーになると、ふたりはコートにへたり込んでしまった。 「マリエ、きみはいい反射神経している。上級の競技者になれる素質がある」 先生はゆっくりと立ち上がった。マリエもそれに続いた。 「あたし、先生の名前知らない」 「わたしの名」 「うん」 先生ははにかむように笑った。 「M(エム)だ。そう呼ばれている」 帰り際にM先生がマリエにタブレットを渡した。 「これ通信はできない。だけどいろんなe-SPORTSの情報が入っている」 病室に戻ると、またあのロボットが待ち構えていた。 「きょうはずいぶん遅かったじゃないかマリエ」 言葉が以前と比べてぞんざいになっている。 マリエが無視して進むと前にまわりこんで、言葉のつぶてを浴びせる。 「仮病のくせして、病院ででかい顔して歩き回るんじゃないよ、J地区の田舎もんが」 さらに言葉のつぶては飛んでくるが、マリエは一切無視した。 マリエはタブレットを夢中で見ている。いろんなe-SPORTSがあるものだと思う。そんな中でマリエの目を引いたのは、道着を着用しているものである。それにはなにか日本を思い出させるなつかしさがある。 ベットの下であいかわらずロボットがしゃべっている。 「おまえ、あいさつの仕方もわからないのか、こっちへ来てあいさつしろよ」 あのマーガレットがカーテンの隙間からこちらをうかがっているのだが、マリエは気づいていない。 「無視するならそれでもいいけど、どうなっても知らないぞ」 ロボットから発するその声は少女の声になっていた。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.06.29 21:15:30
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