|
カテゴリ:物語
3-22
マリエが夢に見たロボットミマナはどうしているのだろうか。 必死に人間になろうとしたミマナは、いま四面楚歌の状態にある。 表に出れば興味半分の住民から石を投げられ、振り向くと、ロボットやいここまでおいで、とからかわれる。頼りにしていたAIは借金の形に取られてしまってここにはない。情報本部とのアクセスはもちろんのこと、世の中の情報は一切入ってこなくなった。収入が途絶えたことで家賃も払えなくなっていた。さらにエネルギーの問題がある。人間のように食べなくていいが、動くためにはエネルギーがいる。原子力エネルギーで動いていいるのであるが、そのボディに収める量には限りがある。使い切ると動けなくなる。太陽光エネルギーで動くようにもなっているが、それはあくまで補助用だ。 ある日、とうとう家主が退去を追って、それなりの人員(ロボット含む)を従えてやってきた。その後ろにはやじ馬気分のご近所の人たちもついている。 人間を模倣したロボットミマナはそれを受け入れて、黙って家を出た。肩を落としてしょんぼり、その姿は人間ではないかと思えるほどだ。 家主はほっとしたが、住民たちは面白くない。もう少しごちゃごちゃしてほしかった。はらいせに、ミマナの後ろ姿に石を投げつけてみたが、振り返りもしない。 「あれはロボットだ。ロボットに賭けた方の勝ち」 「これがとどめだ。ロボットめ」 そう叫んでボーガンをミマナめがけて構えたやつがいる。 「それは危ない、もし人間だったら」 「そんなわけねえだろ」 というが早いか、引き金を引いた。 矢はシューという高速音を残して、ミマナの背中に命中した。 見物のみんなはアッという声を発して、その背中を注視した。 矢は背中に刺さったように見えたが、矢じりの重さでゆっくりと地面に落ちた。 ミマナは振り向きもしないで、おぼつかない足取りで歩みをすすめた。 「矢は刺さりもしなかったし、痛がりもしなかっただろ、やつはロボットだ」 「そうだ、ロボットに賭けた方の勝ちだ」 住民たちは、お祭りのように騒いだ。この時代の人は、賭けることによって興奮を得るのがあたりまえのことであり、それが道徳ですらある。 トボトボと歩いていくミマナをもうだれも見ていなかった。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.08.15 12:36:34
コメント(0) | コメントを書く
[物語] カテゴリの最新記事
|