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2021.08.15
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カテゴリ:物語
3-22
 マリエが夢に見たロボットミマナはどうしているのだろうか。
 必死に人間になろうとしたミマナは、いま四面楚歌の状態にある。
 表に出れば興味半分の住民から石を投げられ、振り向くと、ロボットやいここまでおいで、とからかわれる。頼りにしていたAIは借金の形に取られてしまってここにはない。情報本部とのアクセスはもちろんのこと、世の中の情報は一切入ってこなくなった。収入が途絶えたことで家賃も払えなくなっていた。さらにエネルギーの問題がある。人間のように食べなくていいが、動くためにはエネルギーがいる。原子力エネルギーで動いていいるのであるが、そのボディに収める量には限りがある。使い切ると動けなくなる。太陽光エネルギーで動くようにもなっているが、それはあくまで補助用だ。

 ある日、とうとう家主が退去を追って、それなりの人員(ロボット含む)を従えてやってきた。その後ろにはやじ馬気分のご近所の人たちもついている。
 人間を模倣したロボットミマナはそれを受け入れて、黙って家を出た。肩を落としてしょんぼり、その姿は人間ではないかと思えるほどだ。
 家主はほっとしたが、住民たちは面白くない。もう少しごちゃごちゃしてほしかった。はらいせに、ミマナの後ろ姿に石を投げつけてみたが、振り返りもしない。
「あれはロボットだ。ロボットに賭けた方の勝ち」
「これがとどめだ。ロボットめ」
 そう叫んでボーガンをミマナめがけて構えたやつがいる。
「それは危ない、もし人間だったら」
「そんなわけねえだろ」
 というが早いか、引き金を引いた。
 矢はシューという高速音を残して、ミマナの背中に命中した。
 見物のみんなはアッという声を発して、その背中を注視した。
 矢は背中に刺さったように見えたが、矢じりの重さでゆっくりと地面に落ちた。
 ミマナは振り向きもしないで、おぼつかない足取りで歩みをすすめた。
「矢は刺さりもしなかったし、痛がりもしなかっただろ、やつはロボットだ」
「そうだ、ロボットに賭けた方の勝ちだ」
 住民たちは、お祭りのように騒いだ。この時代の人は、賭けることによって興奮を得るのがあたりまえのことであり、それが道徳ですらある。
 トボトボと歩いていくミマナをもうだれも見ていなかった。

(つづく)





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最終更新日  2021.08.15 12:36:34
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