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カテゴリ:物語
3-27
ミマナが力なく歩いているのは気持ちが沈んでいるからではない。液体窒素による体温低下から心臓部の温度を保持するためと、収納ボックスを破るときにレーザーを使ったことによって、大きくエネルギーを消費してしまったのである。体内のエネルギーが少なくなっているのである。人間なら疲れたと声に出すところである。半病人、エネルギーが少なくなっていることは自覚している。ただ補給すべき術が今はない。それを求めてさまよっているのかもしれない。ついに動けなくなり、廃線になっている鉄道の傍らで息を引き取るように倒れ込む。そう人が通るところでもないが、近所の子供の遊び場になっているので、ダウンタウン地区の子供たちに発見されることになる。 最初に小さな子供が見つけて、人が死んでいると叫ぶ。 年かさの子が振り向いて、それにおそるおそる近づく。 「わ、なんだこの顔は気色悪い」 「警察に連絡しよう」とPAIを取り出す。 「ちょっと待って、これはロボットかもしれない」 棒でもって、顔や体をつつく。 「やっぱりこいつはロボットだ」 「ほんとうか」 「こっちへ来てよく見てみろ」 その子はもうすっかり落ち着いている。 ほかの子も、それを覗き込む、その顔のむごたらしさに、おへーとかうえーとか奇声を上げている。 「よく見ろよ、動けなくなったロボットだろ」 「ほんとうだ」 みんなも少し落ち着いて納得した。 「だれかが捨てたのかな」 「そうだよ、やばいんじゃない」 「けいさつに届けた方がいいんじゃない」 「まあまちなよ、拾ったのだから俺たちのものさ、持って帰ろうぜ」 「それってやっぱりやばいよ」 「気にしない気にしない、ポンコツおやじのところに持っていこう、あのおやじはこういうのをいじくるのが好きだから、だれかおやじにアクセスしてくれ」 (なんだわんぱく小僧ども、e-SPORTSの予想を聞きたいのか、それにはちょいと早いぜ) (ジジイの当たらない予想なんて聞きたくないよ、このロボットを見てくれ、ポンコツロボットに見えるけど、人間のかっこうなんかして、けっこう高級ロボットと思うんだが) (もっとよく見せてくれ) 少年はカメラをミマナのボディーにちかづけ、なめるようにその姿を捉える。 離れた場所で、ジジイといわれている男がその映像を見ているのだろう。 (おいおい、そのロボットはいま話題になっている殺人ロボットではないか、動かないのか) (ああ、まったく) (警察が捜しているのを知らないのか) (ぜんぜん) (まあ警察なんかにただで渡すこともあるまい。持って帰ってこい、早くした方がいいぞ) 金になりそうだと考えた少年たち5人はミマナを担いでその場を離れた。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.05 22:04:49
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