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2021.09.05
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カテゴリ:物語
3-27
 ミマナが力なく歩いているのは気持ちが沈んでいるからではない。液体窒素による体温低下から心臓部の温度を保持するためと、収納ボックスを破るときにレーザーを使ったことによって、大きくエネルギーを消費してしまったのである。体内のエネルギーが少なくなっているのである。人間なら疲れたと声に出すところである。半病人、エネルギーが少なくなっていることは自覚している。ただ補給すべき術が今はない。それを求めてさまよっているのかもしれない。ついに動けなくなり、廃線になっている鉄道の傍らで息を引き取るように倒れ込む。そう人が通るところでもないが、近所の子供の遊び場になっているので、ダウンタウン地区の子供たちに発見されることになる。
 最初に小さな子供が見つけて、人が死んでいると叫ぶ。
 年かさの子が振り向いて、それにおそるおそる近づく。
「わ、なんだこの顔は気色悪い」
「警察に連絡しよう」とPAIを取り出す。
「ちょっと待って、これはロボットかもしれない」
 棒でもって、顔や体をつつく。
「やっぱりこいつはロボットだ」
「ほんとうか」
「こっちへ来てよく見てみろ」
 その子はもうすっかり落ち着いている。
 ほかの子も、それを覗き込む、その顔のむごたらしさに、おへーとかうえーとか奇声を上げている。
「よく見ろよ、動けなくなったロボットだろ」
「ほんとうだ」
 みんなも少し落ち着いて納得した。
「だれかが捨てたのかな」
「そうだよ、やばいんじゃない」
「けいさつに届けた方がいいんじゃない」
「まあまちなよ、拾ったのだから俺たちのものさ、持って帰ろうぜ」
「それってやっぱりやばいよ」
「気にしない気にしない、ポンコツおやじのところに持っていこう、あのおやじはこういうのをいじくるのが好きだから、だれかおやじにアクセスしてくれ」
(なんだわんぱく小僧ども、e-SPORTSの予想を聞きたいのか、それにはちょいと早いぜ)
(ジジイの当たらない予想なんて聞きたくないよ、このロボットを見てくれ、ポンコツロボットに見えるけど、人間のかっこうなんかして、けっこう高級ロボットと思うんだが)
(もっとよく見せてくれ)
 少年はカメラをミマナのボディーにちかづけ、なめるようにその姿を捉える。
 離れた場所で、ジジイといわれている男がその映像を見ているのだろう。
(おいおい、そのロボットはいま話題になっている殺人ロボットではないか、動かないのか)
(ああ、まったく)
(警察が捜しているのを知らないのか)
(ぜんぜん)
(まあ警察なんかにただで渡すこともあるまい。持って帰ってこい、早くした方がいいぞ)
 金になりそうだと考えた少年たち5人はミマナを担いでその場を離れた。

(つづく)





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最終更新日  2021.09.05 22:04:49
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