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カテゴリ:物語
3-29
ジジイはミマナを解体しはじめた。 しかし、ロボット自ら人間になりたがるのかね。それにしても不細工だな、ロボットには美人がわからないか。そんなことをつぶやきながら作業をしている。 いろんな情報や、動作を管理、制御しているコンピュータの部分は意外に小さい、これは人間の体の脳の大きさのバランスと同じぐらいだ。これは頭にはなく、お腹にある。ロボットはものを食べないから胃袋は必要ない。だから胃のところにコンピュータがあり、その下の腸のあたりに燃料タンクがある。超小型原子力である。胸にはエアーコンプレッサーとアキュムレータが付いていて、ここで空気の圧力を調整して、液体をシリンダーやアクチュエータに送り込んで、体を動かすようになっている。液体が人間の血液の代わりということである。汚れた水を出すために、ドレーンが下半身についているのはご愛嬌か。頭と顔には、カメラ、マイク、スピーカ、温度センサ、ジャイロというようなものが詰まっている。 いろんなパーツを取り外しながら、だれの所有物であったか知らないがこいつは高級なロボットであることは間違いない、ジジイはそう確信した。パーツをすべて取り外し、空になったロボットのボディを溶かしてしまおうと考えた。しかし、ジュラルミンでできているボディを溶かすには手間がかかる。警察に壊させるというのはどうかと考えた。ジジイは空になったミマナの体の中に、部屋の奥にあった電子部品やアクチュエータを組み込み動けるように再構築する。そのロボットは自分のPAIでコントロールできるようになっている。指の先から火炎放射器のように火が出るように細工をほどこした。これで警察に攻撃を加え、反撃させるのである。そして破壊される。ジジイはひとり満足そうにうなずいた。 裏の解体工場のスクラップ置き場のスクラップのうえにそのロボットをを置いた。 木は森に隠せか、といいながらジジイはその場を離れた。できるだけ遠くに居場所を移すことにする。 あくる日、警察の一行がヘリコプターで解体工場にやってきた。 私服の刑事が工場長にタブレットを見せて言った。 「この少年たちを知っているかい」 マッシュたちが映し出されている。 五十がらみの工場長は首を伸ばして覗き込み。 「認証コードを」 といって、工場の端末に照会した。 「うちのレンタルの子たちですね」 「このロボットを持ち込んでるはずだが」 「いつ頃の話ですか」 「きのうだ」 「このロボットの管理番号は」 「この番号だがね」 その番号を端末で照会してみる。 「ありませんね」 私服は工場長を上目づかいに見た。 「そのロボットは危険ロボットでね、こちらで確保しなければならない」 「そのレンタルがここに運んだといっているのですか」 「ここしかないだろ」 「レンタルが持ってきたものを受け取るわけがないでしょ、かれらは廃品の解体工として働いているだけですよ、うちは正式なルートの物しか受け取りませんよ」 「まあいいでしょ、殺人ロボットなので家宅捜査はできる」 私服は部下に命令して、工場の上空にドローンを飛ばさせた。 「ちょっと待ってください」 工場長は落ち着いた声で言った。 「この裏に変な老人がいて、レンタルから電子部品を買っているという話を聞いたことがある」 その話が終わらないうちに、隊員からの連絡が入った。 「それらしいロボットがありました」 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.19 23:36:33
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