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カテゴリ:物語
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私服刑事と工場長は隊員の背中を追って、事務所を出た。 「あそこです」 隊員はスクラップの山の上を指さした。 「あの上に、それらしきロボットが横たわってます」 私服と工場長は目を細めて、そこを見た。 電子部品を取り外した樹脂のケースや、金属片が積まれたその上である。 「確かにあれのようだ」 私服はてきぱきと隊員に指示を出し、立ち入り禁止のエリアを設けた。工場の人間が何事かと何人か集まって来ていた。 「あなたも下がって」 「動かないようですが」 「いやわかりません、この前はレーザー攻撃を受けたのだから、どんな武器を持っているか、とにかく危険ですから」 工場長は言われるままに下がった。 私服は処理班のリーダに連絡した。 処理班はすぐにやってきて、ドローンを飛ばして動かないロボットの様子を見た。 「まったくエネルギ反応はみられないな」 リーダが言った。 「外からの通信電波はどうなんだ」 私服が言った。 「反応ないですね」 「よし慎重にそこから降ろせ、作業はロボットに任せろ、隊員は被物体に近づくな」 リーダは隊員に命じて、処理作業に取り掛かった。 この一部始終をジジイは小屋の上に取り付けたカメラで見ていた。 いま、ジジイがどこにいるか、それは言えない。この地を離れたことは間違いない。 「おもしろくなってきたじゃない」 横で画面を見ていた若い女性のピーチアップルが言った。 若い女性といっても、ジジイから見てである。普通でいえば年配者である。 「これからな」 スクラップの山から降ろされたロボットはまったく動かなかった。 「棺桶を運んできて収容しろ」 リーダは何事も起こらなかったことを安堵しながら言った。しかし収容してしまうまで安心はできない。 なんとも憎たらしい顔をしていやがる。人間を襲うなんて許せん。ロボットの顔を見ながら私服は思った。 運ばれてきた金属のケースが光を反射させて、それが私服の目に入った。私服は一瞬目を閉じたが、光の痕跡は執拗に網膜に残った。 私服はしばらく目を閉じていた。何かおかしい。太陽の反射ではない。ロボットを見た。顔が笑ったように見えた。口から赤い光線、また目をやられた。 「こいつは危険物だ。液体窒素をかけろ」 私服は下がりながら怒鳴った。 眠っていたロボットは窒素が噴射される前に立ち上がった。まとわりついていた丸形ロボットを投げ飛ばし、動き出した。 ロボットを遠隔で動かしているのはジジイである。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.24 03:21:36
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