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カテゴリ:物語
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「やっぱり動きやがったか」 私服刑事は憎々しげに言った。 「おーい、レーザー銃で焼き切ってしまえ」 隊員はレーザ銃を操作してロボットめがけて発射するのですが、ロボットは身軽に飛び跳ねてそれをかわすのでした。 「このロボット身が軽いのね」 映像を見ながらピーチアップルがジジイの方を見て言った。 画面から目を離さないでジジイが答える。 「ホッピングシューズを履いてるからさ」 「それなーに」 「100年前位にはやった運動靴さ」 「へー今頃でも役に立つんだ」 「わしが改良して使えるようにしたんだ」 ここでふたりが見ている画像は、ロボットからの視点でなく上から見ているから、現場の動きがよくわかる。 私服刑事は指名手配のロボットが動かなくなっているところを、少年たちに捉えられここに運び込まれたという情報を得ていた。少年たちが警察に通報しないでここに持ってきたということは、中古ロボットとして売ってこずかい稼ぎをしようとしたのだろう。ハウスのレンタル少年の考えそうなことだ。どうせばれて警察に油を搾られる羽目になるのにバカな奴らだと鼻で笑っていた。しかし動かないロボットということ、この解体工場のことはよく知っているということで確保の責任者に名乗りを上げたのは軽率だった自省している。バカな奴らの言葉を簡単に信じたなんて、ロボットは死んだふりをしていただけじゃないか。 これ以上暴れられてけが人などが出たらまずい。 「おーい捕獲隊のリーダなんとか捕まえられないのか」 離れたところで指揮を執っているリーダが振り向いて言った。 「爆弾でも使いますか」 「バカ、そんなもの使えるわけがないだろう」 人間なら武器を持っているかどうかすぐに分るが、ロボットにはどんな力があるかわからない。逮捕経験豊富なベテラン刑事といえども、ロボットを逮捕したことはない。 「ドローンからワイヤーの輪っかを投げ落とし、縛って動けないようにしますよ」 リーダの言葉に、内容はよくわからないが頷くより仕方なかった。 こちらは警察の本部である。やはりドローンから送られる映像を見ている。 「なんであんな私服刑事が現場の指揮を執っているのだ」 本部の担当部長が言った。 「地元の刑事でそこらあたりのことに詳しいので、任せました」 部下の係長がが答えた。 部長は係長の顔をあきれ顔で見た。そして部屋の中のだれかに怒鳴った。 「ロボットにはロボットだろ、ロボット部隊をすぐに出せ」 部屋の空気があわただしく動いた。 部長は恐縮したままで立っている係長に向かって、口角から泡を飛ばすようにして言った。 「まったくロボットに遊ばれてるではないか」 係長は画面をのぞき込んで、いっそう身を固くした。 「よくみろ、ロボットが敵ではないんだ。こいつは遠隔操作されているだけだ。ロボットの視点で動いているわけではない、もっと上から見て動かしているんだ。このデカはそれがわかってない」 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.26 13:23:02
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