|
カテゴリ:物語
⑨
・・・こいつは鳥のようで鳥ではない。顔が鳥とは違う。俺は用心しながら近づいてみた。眠っている間に殺してしまえば、もう頭にこないだろ。俺は手にかけようとして、ふと思った。こいつは生きものではない、天使だ。生きものでないものが死ぬということはあるのだろうか。俺が躊躇して見つめていると、あの嫌な臭いがよみがえった。俺はおえーとなりそうになった。またいやなあの声だ。 snake、私のことが心配で見舞いに来てくれたのか。 誰が見舞いになんか来るものか、お前が弱ってると聞いて絞め殺しに来たんだ。ただお前は生きものでないから、殺すことができないのではないかと考えてしまった。 それは正解だな、私は生きものではない、だから死なない。 しかしお前は雨に濡れて弱っていたではないか、あのままでは死んでいたのではないか。 たしかに私は水に弱い。だから水のある所には近づかない。昨日は君と話をするのに夢中で油断した。 水に弱いのか、それではひきずってでも川に落としてやればよかった。 そう乱暴なことを言わないでくれよ、君と私は親友ではないか。 なにが親友だ。勝手に俺の頭の中に入り込みやがって、だいたいお前は地上げ屋の番頭なんだろ。 地上げ屋、そんな言い方はないだろ。わたしたちはここに天国を創ってあげようというのだよ。 大きなお世話だ。俺たちは自然のままでいいんだ。 snake、あなたは選ばれたものなのだよ。godは君を祝福する。毛影のないものが天国の主になる。それはやはりあなただ。 その主になればgodは俺の言うことを何でも聞いてくれるというのか。 もちろんだな。 そうなれば、まずお前さんをどうにかしてもらいたいね。 それはいい考えだな。 samaelはにゃっと笑いやがった。こいつは生きものでないから殺すことができない。厄介な奴だ。 snake、いま君は殺すことができないから厄介だと考えただろ。殺すことがすべての解決になると考えるのは愚かなこと、毛影ものと同じだ。殺し合いの冷たい雪だるまを憎しみあったもの同士が協力して転がすようなものだ。 おっとまたしゃべりすぎた。生きものの前に姿を見せすぎるのもよくない。 samaelは翼を、さっと広げた。薄暗い穴名の中でも、羽根の裏は虹色に輝いた。俺はその光に目をそらした。 私は水に近づけないから、羽根の下に水を持っている。まあ栄養ドリンクの入ったペットボトルのようなものだ。この水がなくなった時、私の命が尽きる。親友の君には教えておこう。 samaelは羽根の下の、それを一つとって飲み干した。そして入り口に向かった。入り口でこちらに向き直った。 選ばれしものに光を。 そういって翼を広げた。mogu穴が光に満ちた。 俺は目を閉じることもできずに固まってしまった。 横で、moguが気を失っていた。 俺はmoguが横にいたことにはじめて気づいた。 なんという光だ。あれは天界の光か、それとも… 。・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.23 07:54:55
コメント(0) | コメントを書く
[物語] カテゴリの最新記事
|