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カテゴリ:物語
㉑
・・・俺はくねくねと体を曲げながら住み慣れた故郷に戻ってきた。ここまでくれば一安心。冬眠穴は自分で何とかしなくてはならない、これから一仕事だなとかんがえながら、俺がいつも見晴らし台に使ってる岩の方に目をやるとなにかいやがる。俺は少し警戒のいろのある声で呼びかけた。・・・ (snake) おいお前、見かけんやつだな、だれだ。 ・・・そいつは体をぴっくと動かした。目と目が合った。首をすくめて逃げようとした。しかし動きが鈍い。俺は尻尾をゆっくり回して、そいつの動きを止めた。・・・ (snake) とって喰おうとはいわん。でもだれなんだ。 (kamekou) kameだす。 ・・・kame、kame、俺は頭の中で言葉のルーレットを回した。ボールはポケットに入らなかった。?もう一度聞く。・・・ (snake) kame? (kamekou) そうだす。 (snake) そうだすって。 ・・・俺はもう一度言葉のルーレットを回した。kameは甲羅の文字に隠れていた。・・・ (snake) kameと言えば甲羅、お前それがないじゃない。 (kamekou) そうだんねん。 (snake) そうだんねんだって、甲羅のないkameなんて……なんで。 (kamekou) 盗まれたんだす。 (snake) どうして盗まれた。 (kamekou) 甲羅がきついから脱いでいたのだす。 (snake) 脱いでいたって、俺たちみたいに脱皮するのか。 (kamekou) 脱皮はしません。まあ話せば長くなるのですがわしはもともとウミガメ、海の甲羅を着ていたのだす。それが事情があってリクガメの甲羅を着ていたのです。そのサイズがわしには小さかった。窮屈だからときどき脱いで手足を伸ばしていた。今もそうしていたんだす。 (snake) そのすきに盗まれた。 (kamekou) そういうことだす。 (snake) 悪い奴だな、そいつは逃げたのか。 (kamekou) いや、あそこにいます。 (snake) 取り返せないのか。 (kamekou) 甲羅に潜って話を聞かないのだす。 (snake) どんなやつだ中に入ってるのわ。 (snake) なんだkaeru野郎ではないか。おいkaeruそこから出てこい。 (kaeru) いやなこったな、おいらここがいい。 (snake) ここがいいたって、おまえそれはkamekouのものだろ。 (kaeru) これはおいらが拾ったんだ。だからおいらのもの。 (snake) それはkamekouが甲羅干ししてただけだろ。返してやれよ。 (kaeru) あんたよく見るとsnakeだろ、おいらが出て行ったら食うつもりだろ。 (snake) 喰いはしないさ、俺はいまはmoguraの燻製を食って腹いっぱいなんだ。お前みたいな痩せkaeru喰う気にはなれない。なんならmoguraの燻製分けてやってもいいぞ、まだたくさんあるから。 (kaeru) そんなこと言ったって、二枚舌なんだろ。おいらは絶対出ない。 (snake) 今出てきたら食わないが、出てこなかったら、引っ張り出して食ってやる。 (kaeru) やっぱり食うんだ。絶対出ないぞ。 (snake) まったく、こうなったら意地でも引っ張り出してやる。 ここから首突っ込んでと、よいしよと。入れた。 うん、ちょっと暗いな、あ、あんなとこにいやがった。 おい、出て行かんか。首根っこに食いついて引っ張り出すぞ。 (kaeru) わあー、入ってきやがった。おっかねえ、逃げよう。 (snake) こら逃げるな、ああ出て行ったから、それでいいのか。 あれ、首が抜けんぞ。……う、抜けない。 (kaeru) うん、どうしたんだい。ひょっとして抜けない。面白そうだからこっちから覗いてやれ。 おいどうした。首が抜けないのか。真っ赤な顔して必死じゃないか、無理しておいらを食おうとしたから、罰が当たったんだ。いい気味だ。 (snake) うおーーー。 (kaeru) おっと危ない、そんな狂った獅子舞みたいに首を振るなよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.25 22:04:23
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