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2024.08.10
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カテゴリ:カテゴリ未分類

(kaeru)
 kamekou、そもそもおまえはなんでこんなとこまで来たんだ。

(kamekou)
 わしは故郷に帰るために元の甲羅に戻さなければならないので、交換した相手を探していたのだす。元いた場所にいなくて、それであっちこっち探してここまで来てしまったのだす。

(snake)
 玉手箱はどうなったのだ、開けたのか。

(kamekou)
 いや、あのあくる日にあの少女が来て、玉手箱を盗んで開けようとしたのだす。

 あくる日は雨も上がっててね、いい天気だす。わしは足腰肩の筋肉、おまけに首まで痛くって、それにこの甲羅は陸カメのもの、体になじまないから節節も痛くて、身も心も沈んでいたのだす。それでもなんとか這って海まで行ったのだす。甲羅を脱いで海に入って手足を伸ばすとなんと気持ちのいいことか、青い空に白いお日さん、それだけで気分が広がりますよ、泳いだり潜ったり、しばらく海と戯れるとすっかり元気を取り戻しただす。
 わしが海から上がって一服していると、あの少女の姿、少女は男の留守のうちに笛を盗みに来たのだす。わしは急いでそっちへ向かうが足は遅いだす。
 少女は笛を探し当て懐に入れた。その時その奥に何かあるのに気付いて手に持った。箱である。これはなあにと顔を傾けた。浅黒い顔はみるみる好奇心で赤くなっていく。少女は石の上にそれを置いて砂を払った。背後から太陽が照りその影を箱の上に落としている。
 わしは叫んだ、開けるな。
 その声は少女に届かない。ひもを解くその手が震えている。少女ははーと息を吐き、蓋をゆっくり開けて中を覗き込んだ。
 わしはだめだと肩を落としただす。
 覗き込んでいる顔と蓋を持っている両手の動きが止まった。体が小刻みに震え、紅潮していた顔から血の気が引いた。少女はその箱を砂の上に投げ捨てた。
 わしはその動きをスローモーション映像のように見ていた。
 少女は泣きわめきながら、全力で走った。途中で笛を海に向かって投げ捨て、また全力で走り、浜から消えた。
 わしも全力で這って、波にさらわれる前に笛を拾ったのだす。それから玉手箱を手にして、蓋を閉めてひもをかけたのだす。
 玉手箱の中に何が入っていたか聞きたいのでしょ。
 少女は中身を見ていないのだす。

(snake)
 どうしてだ、蓋を開けたのだろ。

(kamekou)
 蓋は二重になっているのだす。

(kaeru)
 だったらなんでそんなに驚いたんだ。ここは煙でも出なくてはいけないんじゃないか。

(kamekou)
 その下の蓋というのは鏡になっているのだす。その鏡は見方によってものが歪んで見えるのだす。少女には鏡に映っている自分の顔が老婆のように見えたはずだす。

(kaeru)
 一瞬に年寄りになってしまう。そう思いこむ。なんか浦島伝説のまねしてない。

(snake)
 evaのときと似ているな、evaも実際にはあの実を食べていないのにあわてて逃げ去った。

(kaeru)
 玉手箱なんて大げさな名前つけて、結局中身は煙だけじゃないの。

(snake)
 それでお前は中身を知ってるのか。

(kamekou)
 わしは中身までは知らんのだす。簡単に開けられないように中蓋に細工がしてあるのは知ってましたが。

(snake)
 それでその玉手箱はどうした。元に戻したのか。

(kaeru)
 そんなの、もうどうでもいいや。





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最終更新日  2024.08.10 07:48:26
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