|
カテゴリ:硬派
チャップリンのモダンタイムズの「Smile」が細野晴臣さんが
アレンジした音楽が流れていた。 女性の小さく震えた、ジャズのような声が、センスのいい暗さを 持つバーを思い起こさせた。 そして、映像。 アメリカの林立するビルがセピアのような黄色がかった色に なり、傘をさした人々の黒い影がぺらぺらと舞い上がり、そして 堕ちていった。 常に、大粒の雨のように紙幣が降り注いでいた。 ただ、これは芸術映画ではない。 ドキュメンタリーである、 「マネー資本主義 第1回 “暴走”はなぜ止められなかったのか ~アメリカ投資銀行の興亡~」だった。 非常の骨のあるドキュメンタリーだった。 世界の金融危機を生み出したとされる投資銀行の30年にわたる長きに わたる衰亡をたどっていた。 わかりにくい用語の解説も詳しく、レバレッジの解説は実にシンプルで、 判りやすかった。 レバレッジって、非常に技術的に洗練された借金なんだってわかったしね。 ただ、僕がこの番組にひかれたのは、その骨太だからだけではない。 事実を判りやすく伝えるという使命を果たしているだけではない。 そこに人間がいたからだ。 いつの時代も変わらない人間の姿をあぶりだしていたからだ。 人。 投資銀行で金儲けをしようとする欲望を持っていた人がいる。 危険性を察知する人がいる。 警告を発したからこそ、組織を去らなければならない人がいる。 そして、その渦に巻き込まれ破綻する会社がある。 ソロモンブラザースであったり、リーマンブラザーズだ。 組織がある。 判りやすい英語を喋る彼らは、全員弱い人間に見える。 「私は世界をつぶすつもりはなかった・・・ もっと、利口になるべきであったのだ」 元・ソロモンブラザーズ証券会長のグットフレンド氏の言葉である。 愚かといってしまえばそれまでだ。 悔恨さえ弱々しい。 でも、グットフレンド氏はウォール街の帝王であったのだ。 たまらなく悲しいことに思いませんか? 欲を追い求め、やがては押しつぶされてしまう 人間のたちの悲しい業(=なりわい)がこのドキュメンタリーからは 浮かび上がってくる。 うすっぺらい人間たちだ。 そうだ。 彼らが会社で論争になったことがあった。 儲けている分野の人間、トレーダーが経営者に給与の 大幅なアップを詰め寄る場面だった。 経営者ははじめは拒否をした。 会社のお金を使って儲けだだけの、社員だからだ。 しかし、結局は大幅な給与のアップを認めなければ ならなかった。 トレーダーが好条件で他社から引き抜きをうけていたからだ。 それは、ニューヨークにあるレストランで話し合いが もたれた。 こんな映像だった。 今でもある個室のテーブルに座っている彼らは 写真か、絵でしかなかった。 下手な再現ドラマではなく、実際のレストランに 紙が座っている映像だった。 厚みのない写真が鎮座しているのだ。 薄く、ぺらぺらで、しかし、正面の肖像である写真は 威厳をもっていた。 このマネー資本主義の、第一回目は事実を、経済的な事実だけを 追い求めた結果、壁のように立ちはだかった人々をあぶり出していた。 二回目を私は楽しみにしている。 最後に、再びグットフレンド氏の台詞を引用しよう。 「・・・顔ぶれも変わる。 ゲームの内容も変わる。 しかし、私の経験から言えば、天まで伸びる木はないということだ」 ※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎ものがたり』まで お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[硬派] カテゴリの最新記事
|