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田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2009年06月30日
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カテゴリ:ほどよく
以前に書いた「本厚木、東京、いきものがかり」がすごく、ひっかかってました。

リライトしました。

以前の日記にそのまま上書きしてもよかったのだけど、前の
文章も捨てがたかったので改めて、書いちゃいました。

よろしければ、雰囲気の違いを楽しんでください。

…これからも、リライトシリーズあるかもね??…

では、はじまり。

****

本厚木への出張が決まった。
僕は電車の時間を調べた。

京都から関東への出張だから、余裕があれば
東京によろうかと思ったけど、びっくりした。
片道、2時間弱はかかるではないか。

本厚木に住んでいる人にとって、東京は
休日には遊びにいけるかもしれない。
ちょっと、立ち寄る感じではないだろう。
通勤するのも骨が折れる。

もしかしたら、遊びに行くのも東京は少ないかも
しれない。
本厚木は横浜のほうが、近いから。

****

出張当日。

雨がぱらぱらしていた。
小田原から本厚木の間には街がほとんどなかった。
緩やかな山の杉の緑、合間の平野には稲の穂が雨の重さで
しなだれていた。
そんな、景色が繰り返されていた。

電車が本厚木に近づいてからが、やっと、
人のいる街だった。

僕は駅に降りて、昼食屋を探した。

駅前から5分も歩けば、牛丼屋やファミレスが
揃っていた。
ついでに関西系の中華料理店、…王将のこと
だけど…もあった。

僕はファミレスに入った。
二人席が多いファミレスは窮屈だった。
窓際に僕は座った。

雨の向こうにある、駅前はコンパクトだった。
駅に直結したショッピングモールがあった。
日用品とか、ちょっとだけ、しゃれた洋服はそろうだろう。

ファミレルの向かいには赤い看板のカラオケ屋があった。
遊びには不足しないだろう。

とびぬけた、贅沢はできないとしても、ただ、
生活するには不足はない。
むしろ、便利だろう。

ファミレスで食事を終え、僕は歩いた。

鉄塔沿に歩き、団地を通った。
通りに面して、ガラス張りのコンビニがあった。
昼休みで緑の作業着の人がコンビニでコーヒーを
買っていた。

僕の訪問する会社は、小さな工場地帯の真ん中にあった。
建物の合間から、高架になっている高速道路があった。
防音壁のフチの緑が街を区分けするように引かれていた。
工場地帯と、高速道路の防音壁の間にはラブホテルがあった。
昼間だから、ラブホテルにネオンはついていなかったけど、
看板は薄暗い雨の中でも目立つ色をしていた。

彼氏と過ごしたり、遊んだりするのにも不足はないの
かもしれない。

ふと、僕は思った。

「この街のどこかで『いきものがかり』は歌っていたのか」と。

****

いきものがかりは、日本のバンドである。
メンバーは三人。

水野良樹さんと山下穂尊さん、そして、吉岡聖恵さん。

とはいえ、このバンドの魅力はボーカルの吉岡聖恵さんの
声だろう。

あなたが、もし、彼女の中音域で震える声をじっくりと聞くのだとしたら
泣きそうになるあなた自身に気がつくかもしれない。

だから、「泣き笑いせつなポップ3人組」というキャッチフレーズも
うなずける。

****

僕がいきものがかりにはまったのは、去年の紅白歌合戦だった。
吉岡さんと、平原綾香さん、青山テルマさんの三人で歌った
「天空の城 ラピュタ」の主題歌、「君を乗せて」に心を
奪われたからだ。
ちょっとの間だけ、年越しそばのことを忘れるくらいだった。

リードボーカルだった平原さんが上手な歌手なのはは知っていた。
だからこそ、僕が驚いたのは、吉岡さんの声の震え方だった。
綺麗な平原さんの声に、吉岡さんのビブラートが重なり、
青山テルマさんのステップを踏むようなリズムが乗っかってた。

三人とも、互いを殺さず、歌は続いていた。

紅白でいきものがかりとしては、「SAKURA」を歌っていた。
誰の声ともかぶらなくても、吉岡さんの声は、そしてその歌は
心地よく、気がついたら、涙を流しそうになっていた。
例え、てんぷらそばを食べていたとしても。

2009年になり、僕の一番初めに買い物は、「SAKURA」が
収録されている「桜咲く街物語」だった。

***

本厚木の路上、おそらく駅前で「いきものがかり」は
歌っていたのだろう。

想像以上に東京よりも距離のある、この本厚木で。

「SAKURA」とか、「ふたり」では
若い恋人の別れや、そこからの再出発が歌われている。

でも、その別れっていうのは、永遠に別れるという感じでもない。
例えば、東北から東京に出てくるように、会いに行きにくい距離に
離れるというイメージではない。
距離が二人を引き離してしまってはいない。
距離だけが悪者じゃない。

彼は東京に行く。
会いにいけない距離ではない。
でも、実際には彼は遠くいってしまった。

何が?

それは、生活とか、心が。

東京に住む彼の、新しい住まい、新しい仕事。
もしかしたら、都心の大学かもしれない。

だから、小田急線の桜の咲く様が哀しいし、東京の
風がわたしは無力感をもたらしてしまうのだ。

もう、彼は以前の彼じゃなくなった。
でも、それは距離のせいじゃない。
距離のせいにしたいけど、そうじゃないんだ。

心が離れたことが、悔しいけど、はっきりと僕たちは
わかってしまったんだ。

だからこそ。

あなたは別の場所に進んでいく必要があると、いきものがかりは
歌っている。

そんな気がして、僕はならない。

****

東京って、僕らにとってなんだろう。
そう、今の日本の僕らにとって。

きっと、どの地方からも東京へは行こうと
思えば時間はかからない。

特に宇都宮とか、柏とか関東近郊のソコソコの
繁華街はそうだろう。

でも、やっぱり、東京に住むということは何かが
違うのだ。
東京に住まざる得ない環境になってしまうことは、
あなたや僕らが少なからず変わってしまうということ
なのだ。

帰りたくなったとしても、以前住んでいた本厚木の
ような街には変えることは難しいのだ。

いきものがかりは意識はしていないかもしれない。
だけども、ソコソコの街で高校までを過ごした
僕たちが、やがて東京とか、大都市で働かなきゃなら
ないって刹那さをしっかりと歌い上げているの。

※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎ものがたり』まで





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最終更新日  2009年07月02日 00時16分24秒
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