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カテゴリ:ダウズ・ダウズ・ダウズ
懐かしい話。
★ 今日も今日とて買取である。 夏のくそ暑い太陽は、辛抱たまらずハチミツ色になって海に堕ちた。膨大な湿気はクーラーのせいで時々スモーク化する夜の店内で、せっせと接客する俺。 プレミア系古本屋は今日も怪しげな買い取りで、繁盛だ。 珍しいもの古いものレアなものに値段を提示、折り合えば買い取ると言うテレ東「鑑定団」パクリ設定の150坪ダンジョン店舗は必ず毎日万引き跡があり、懲らしめの為に最近俺は、強烈なカミを駐車場の超高電圧鉄塔に召喚して開眼させてた。 ★ コンビニ強盗に使ったモデルガンを当店に売りに来た真性アフォなデッドリーヤンキーどもが根こそぎ逮捕されたり、 郊外大型ショップのDVDケースの合鍵を使ってショーケース荒らしをしていたウメボシサイズ脳みそヤンキーが本物の免許証で買取とサインをしていたり(マッハで逮捕)、 その他、他言できぬようなヤヴァイネタの集まる、秋田のアンダーグランドではその名を知らぬものはない古本屋になっていた。 ★ その日のことを思い出した。 その日は夏休みの終わりに近かった筈だ。 ほっそりとした中年女性が、俺に声をかけてきた。 印象は特にない。シンプルなワンピースが涼しげだ。軽ワゴン車に大量にあるので運ぶのを手伝って欲しいという。いいですよ~。ありがとうございます~。 確かに大量だった。 ゲームボーイ初期、改、シルバー、ライト、カラー、更にソフト、箱のないものあるもの、男の子用ソフビ人形(仮面ライダーブラック以降)、ガシャポン各種、トレカ、SFC、MDソフト、コロコロ、ボンボン、ジャンプ系コミック数十冊、、、 「高知みかん」と書かれたメランコリーな段ボールに5個以上だったのは覚えてる。兎に角、大量だった。 買取承諾書に名前と住所をサインしてもらい、本人確認の為、免許証を確認した。本人であることを確認する。 「これから査定をするので、店内でお待ち下さい」 「はい、おねがいします」 ★ 日常と言うのは流される為にあるのかもしれない。俺はざっと品物を目見して、プレミアものがないようだと思った。次に高額買取品をABCランク順に、ばんじゅうに入れなおしていく。 取説無箱無ゲーム機器ソフト類には思わぬレアがあったりして気が抜けない。 トレカは纏め買いにしよう。 マンガ本は全て低年齢向けのようだ。妖怪先生ぬ~べ~が微笑ましい。 ★ 違和感があったようだ。 だが、淡々と作業を続けていく俺。 ★ 「病気が治ったら一緒にここに来ようねと話してたんですが、駄目でした。楽しみにしてたんですよ。行きたい行きたいって。いろいろ買ってあげたかったんですが、自分の持ち物を売ってお金にするということが凄い新鮮だったんでしょうねぇ」 お母さんは分類されたおもちゃ類をちらりと見た。ふふふ。 何か気の利いた事をっ、俺っ、言えっ! ★ お母さんは提示された金額をみて、ふふっと息を吹き出し、サインをして、お金を受け取り、帰っていった。本当ありがとうございました。こちらこそ、ありがとうございました。 ★ そのおもちゃ類に感じた違和感が漸く言語化される。 そうだ、こんなにゲームやマンガが好きな男の子なのに、最新のものが全くなかったのだ。 俺は買取価格の高価なものをピックアップしてみた。去年のクリスマス時期に出たポケモンソフトが最も新しい。買取レベルはBダッシュだ。微妙に古い。時季的にこれより新しいものはないようだ。てことは、今年のお年玉は使っていないのか。。。いや、、、 一番古いものを逆に探してみる。 物心ついた男の子が持つもの。仮面ライダーとウルトラマンのソフビかな。約5~6年前か。てことは、10歳くらいか。 確かに俺は何かに気づいていた。 誰かの人生を数年間だけ切り取ったかのような、総ざらえな根こそぎ感。 これからこのおもちゃたちは掃除して分類され、店内に売りに出されて、在庫過多のものは倉庫に向かう。立ち読みされたり、売れたり、売れ残ったり、盗まれたりするのかもしれない。 ★ 死後自分の精神が人々の心の中に生きているのなら、自分は死んだのではない (キャンベル)詩人 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.08.15 09:12:12
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