【巨大システムはこうして作られた】みどりの窓口を支える「マルス」の謎
みどりの窓口を支える「マルス」の謎日立製作所によって開発が始められた国鉄の発券システム「MARS(マルス)」の成長のドキュメンタリーである。1960年の「マルス1」から2004年に完成した最新の「マルス505」まで、開発年表やスペック表が掲載されており、システム屋として参考になる資料だ。現在のマルスは、データ投入から発券までのレスポンスタイムは最大6秒を保証するという。レスポンスタイムというのは非常に重要な要素なのだが、Webアプリが興隆してきた現在、ついつい忘れがちな要件仕様である。また、予約のブッキング、システムダウン対策など、システム設計の基本が淡々と述べられている。マルスは大型電算機の時代にスタートしたシステムだが、分散処理系に移行した現在でも、基本となる要件仕様は厳しくチェックされているようだ。マルス以前の座席予約システムは、回転する円卓に紙の予約台帳が並べられており、その円卓の回転速度が速いため、オペレータには動体視力と反射神経が要求され、けが人が続出したそうだ。一方で、「マルス1」は東海道新幹線開業前にリリースされたのだが、当初、新幹線の予約には使われなかったという。当時の人たちは、電算機を信用していなかったのだ。しかし、「マルス1」は順調に実績を伸ばし、関係者の信頼を勝ち得ていった。そして新幹線をはじめとする、すべての座席予約を担うこととなった。その後、マルスの作業範囲はどんどん広がり、現在では発券はもちろんのこと、ホテルやレンタカーの予約も含み、自宅の電話やインターネットからの予約ができるようになった。このような巨大システムの開発に携われrとしたら、仕事は大変だろうが、技術者冥利に尽きるというものだ。■メーカーサイト⇒杉浦一機=著 「みどりの窓口を支える「マルス」の謎」