【“ヴェリコフスキーの彗星”再び】揺籃の星(上・下)
揺籃の星(上)揺籃の星(下)アニメでもパクられることが多い「ガニメデの巨人」シリーズでお馴染みのジェームズ・P.ホーガンの、新作ハードSFである。本作は、トンデモ本の元祖たる“ヴェリコフスキーの彗星”(『衝突する宇宙』)と、ハードウェアSFの嚆矢たる“幼年期の終わり”(『地球幼年期の終わり』)が合わさり、現代風にアレンジされた感じだ。冷戦後の世界情勢に対する風刺も読み取れる。ホーガンの作品に登場する主人公は、“良き”科学者である。私は、この設定が大好きである。本作の主人公キーンは、象牙の塔に籠もるのを良しとしない勤勉な科学者だ。自らの研究をビジネスにしようと寡黙に働く彼だが、ある日を境に、人類存亡の危機に巻き込まれる。キーンは聴衆に対して激しい口調でこう言う――たいせつなのは今日なにをするかということなんです(下巻61ページ)。ストーリー展開は早く、下巻の終盤では悲劇的な光景が展開される。だが、本書は三部作の第一作目だとのこと。続編が楽しみだ。■メーカーサイト⇒東京創元社(創元推理文庫) 揺籃の星(上)、揺籃の星(下)■販売店は 上巻はこちら、下巻はこちら