【我々はSNSで情報発信しているか?】コメントする力
コメントする力 物事はすべからくグレーと考える姿勢が大切です。(69ページより)著者・編者竹田圭吾=著出版情報PHP研究所出版年月2013年9月発行ブログや Twitter で情報発信する機会が増えたが、果たして自分は本当に情報を“発信”しているだろうか――そんな不安から、本書を読んでみた。著者は、ニューズウィーク日本語版の編集長を務め、現在はニュース番組のコメンテーターとして活躍している竹田圭吾さん。竹田さんは、コメンテーターに求められる技術は、「思いついたら喋る。あるいは、思いつきながら喋る。ときには、思いつく前に喋る」(2 ページ)ことだという。そのために竹田さんは、情報を整理しないという。情報を整理すると、情報同士のリンク(コンテクスト)が失われるからだ。情報は主観的に抽出し、メールや SNS を使って自分宛に備忘録として送っておく。大切なのは、情報を全体像で見ることだという。そして、デカルトの『方法序説』を引き合いに出し、「情報に接する態度の基本は、客観的な事実に重きを置いていない情報はとりあえず『疑ってみる』こと」(45 ページ)とアドバイスする。また、情報収集には、時間を決めて全国紙に目を通したり、そのテーマについて書かれている書籍を 3 冊読むことだという。ニューズウィークでは、記事を article や item と呼ばす、story と呼んでいた。竹田さんはそこでの経験から、「記事であれコメントであれ、情報はなるべくストーリーで発信するように心がけて」(113 ページ)いるという。そして、「よいストーリーには、よい企画が必要です。企画を立てる際にまず最初に考えなくてはいけないのは、ターゲット=誰に対して、何を目的に、どんなメッセージを発するのかということ」(122 ページ)だという。この企画を蔑ろにすると、ブログや Twitter が炎上するのではないだろうか。竹田さんは取材に行くとき、事前に聞き出したい事項をメモしていくという。さらに、「リアルにその人に接する時間は、『ネットでは得られない情報を得る』ことに徹するべき」(144 ページ)という。竹田さんは、コメント力の奥義として「コメントすることがないときはコメントしないこと」(148 ページ)をあげている。さらに、「コメントするときは『何を言うか』の前に、まず『何を言わないか』を自分のなかで確認」(153 ページ)するという。言わないようにしている具体例として、「代案なき批判」「極端な悲観論」「未来すぎる提言」「原則論」(156 ページ)をあげている。たしかに、視聴者としては「代案なき批判」をするコメンテーターにはイライラさせられる。逆に、自分が Twitter で発信するときはどうだろうか。コメント力の奥義は、そのまま利用させてもらおうと思う。竹田さんは、コメントを発信するときには「自分にしか言えないこと」(172 ページ)を付加価値として付けることが大切という。たしかに Twitter でリツイートされる時は、オリジナルの発言がほとんどだ。私をフォローしている人たちが求めているのは、オリジナリティのある発言なのだ。オリジナリティのある発言を続けていくためには、常に自分の立ち位置を意識して生きていく必要がある。また、Twitter を活用していることに触れ「自由にボケとツッコミをやり取りできるツイッターは、デジタル空間にこつ然と現われた黄金郷のような存在」(216 ページ)と絶賛している。最後の最後の 218 ページで、「情報を読み解く力とコメントする力を鍛えるのに役に立つこと」14項目を挙げて、少なくとも 5 つを実践してほしいと締めくくっている。