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カテゴリ:書籍
タイトルに惹かれて買った。『グラップラー刃牙』『ドラゴンボ-ル』『キングダム』といった漫画をオマージュしながら宇宙物理学の解説をするのは、スティーブン・ホーキング博士に師事した高水裕一さん。専門は宇宙論。2021年に読んだ『物理学者、SF映画にハマる』『宇宙人と出会う前に読む本』も面白かった。 高水さんは、宇宙最強の基準として、「大きさ」「重さ」「電気」「速さ」を挙げる。太陽の約1700倍の大きさを誇る巨大恒星たて座UY星、約1000兆ガウスの磁気を発するマグネター、約100万兆アンペアの電流が流れる電波銀河、太陽の約300~500倍の重さがあると考えられている第一世代の恒星「POP III」。速さの第1位は光子だが、僅差でオー・マイ・ゴッド粒子、ニュートリノが続く。 現在この宇宙においては、ダークエネルギーの占める割合が約69%、次にダークマターが約25%、3位はバリオンで約4.8%、4位が光で約0.0055%。この割合は宇宙の歴史の中で変化してきた。ビッグバンから約5万年間は光が優位で、それから100億年までの間はダークマターが優位になり、現在はダークエネルギーがトップの座を占めている(132ページ)。 ダークマターは光と相互作用しないという不思議な性質を持っており、望遠鏡で見ることができないが、質量はあるので重力レンズ効果を見ることで間接的に観測ができる。ダークマターがなければ星や銀河は誕生しなかったと考えられており、天の川銀河では、中心に存在する巨大ブラックホールの質量のおよそ20万倍以上のダークマターが直径30万光年の球体「ダークハローを形成していると考えられている。 『なぜ宇宙は存在するのか』(野村泰紀、2022年)によれば、宇宙の膨張につれてダークマターやバリオンの密度は下がるが、ダークエネルギーだけはエネルギー密度が下がらない。このため、宇宙で時間が経過すればするほど、ダークエネルギーの割合が増えてゆく。アインシュタインが一般相対性理論の方程式に導入した宇宙定数の正体がダークエネルギーである。定数なので変化しないのだ。 いまから100億年後の宇宙は銀河がまばらになり、10の20乗年後には銀河がバラバラになると予想されている。10の34乗年後には陽子の崩壊が起こり、10の100乗年後には銀河中心の巨大ブラックホールが蒸発するという。 あっという間に読み終わってしまった。バトル漫画を読んでいるような面白さだけでなく、知識の更新にもなった――。 バリオン、ダークマター、ダークエネルギーをめぐる最新の知見は、ちょうどNHK『コズミックフロントω』でも取り上げられ、ホットな話題だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.03.25 12:18:06
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