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著者のエリヤフ・ゴールドラットさんは物理学者――前作『ザ・ゴール』でユニコ社のベアリントン工場を立て直してから10年が経った。当時の工場長アレックス・ロゴはユニコ社多角事業グループ担当副社長として手腕をふるい、製造課長のボブ・ドノバンや資材マネージャのステーシー・ポタゼニックも子会社の社長に就いていた。 アレックスの妻ジュリーは、アレックスの恩師ジョナに教えてもらった「TOC理論の思考プロセス」を活用し、自宅で結婚カウンセラーをしていた。成長した息子デイブはアレックスの車を運転したいと言い、娘シャロンは友だちの家でパーティがあり帰りが深夜になるという。感情的には却下したかったアレックスだったが、ジュリーのアドバイスもあり、冷静に「現状ツリー」を構築して子どもたちと満足がいく結論に至る。 ダイナ印刷では菓子袋の印刷事業で、大量印刷でコストを下げてくる競合会社に苦戦していた。ピートは、頻繁に袋デザインを変更する菓子袋の特性に目を付け、在庫の廃棄ロスによるキャッシュフローに苦しむクライアントに対して、在庫が無駄にならないよう一度に発注する量を減らして注文すると単価が安くなることに気付いた。 アレックスは、3社の売却相手と交渉するため、社外取締役のブランドン・トールマンとジム・ダウディーとともにイギリスへ飛ぶ。夜になりレストランで飲みながら、アレックスはブランドンとジムに「UDE」(Undesirable Effects;好ましくない現象) を雲(対立解消図)に書きだして、未来問題構造ツリーを使って新たな問題(ネガティブ・ブランチ)が発生していないかをみせる。最初疑念を抱いていた2人だが、次第にアレックスの説明に興味を抱くようになる。 ダイナ印刷では、営業スタッフが解決策をうまく顧客に伝えられず苦戦していた。そこで、前提条件ツリーや移行ツリーを顧客に見せ、ネガティブ・ブランチが発生しないことを示して顧客の信頼を得ることができた。 ボブ・ドノバンが率いるアイ・コスメティックスでは、流通システムを改善することで在庫を半減させることに成功したが、その結果、短期的ではあるが会計上の利益が激減してしまう。このことで売却価値が低くなってしまうことから、取引を委託販売に切り替え、自社製品の陳列スペースの確保を委託販売の条件にすることで、売掛金が大幅に減少し、大量のキャッシュが浮かすことに成功した。 プレッシャースチームでは、競合他社との価格競争が厳しく、従業員は半分投げやりになっていた。アレックスは社長のステーシー・ポタゼニックとともに社員を集め、意見を求めた。その結果、高圧蒸気の施設ごと委託販売するという画期的なアイデアが出る。設備・スペアパーツ・保守人員などをプレッシャースチームが抱えることで、顧客のコストは半額以下となり、固定料金とエネルギー使用量に応じた金額を毎月支払うだけで良くなる。 こうして、ダイナ印刷とアイ・コスメティックスの2社は、当初より何倍もの価格で売却され、社員の解雇もなく、2人の社長も自由な判断で経営を継続、ユニコ社の格付けは担保された。アレックスは、「非常に価値あるコンセプトを売った」(332ページ)と言う。 アレックスは、会社は『現在から将来にわたって、お金を儲ける』、『現在から将来にわたって、従業員に対して安心で満足できる環境を与える』、『現在から将来にわたって、市場を満足させる』の3つすべてを実現しなければならないと主張する(346ページ)。そのためには、「一つのセグメントだけじゃなくて、すべての従業員がいくつかの仕事に対応できるようにすればいい」(357ページ)という。 前作『ザ・ゴール』の最後でアレックスが語ったマネージャの基本的能力「何を変える」「何に変える」「どうやって変える」の3つを実現するのが、本書が解説する「思考プロセス」である。 前作に続き、登場人物は善い人ばかり――現実のビジネス世界でそのまま通用するとは思えないが‥‥とはいえ、職場でマネジメント、マネジメントと念仏のように唱えているよりは、本書の論理プロセスを実行した方が精神的ストレスが減るのではないだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.29 12:35:26
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