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カテゴリ:書籍
本書を原作とする1982年公開のSF映画『ブレードランナー』(主演:ハリソン・フォード)は、全く異なる設定・脚本になっているが、AI(本作ではアンドロイドの脳ユニット)と人間の違いをテーマにしている点に限れば同工異曲といえる。本書は映画公開より前に読んだのだが、最近、続編の映画『ブレードランナー2049』を観たので、改訳版を買って読み返してみた。 1992年1月、サンフランシスコ警察署の賞金稼ぎ、リック・デッカードは妻イーランと口論になる。それは、感情をダイヤルで調整するペンフィールド情調オルガンによる効果だった。 この時代、複数の会社が人間に変わる労働力としてアンドロイドを開発・販売していた。なかでもローゼン協会が開発したネクサス6型アンドロイドは、人間と区別が付かないほど精巧にできていた。 危機一髪でポロコフを処理したリックは、次のターゲットであるサンフランシスコ歌劇団のソプラノ歌手ルーバ・ラフトに面会する。彼女を検査しようとするが、変質者として警察に通報されてしまう。クラムズ巡査はリックを拘束し、リックが見たことも聞いたこともない警察署に連行され、ガーランド警視に引き合わされる。 遺棄されたビルに1人で住んでいるJ・R・イジドアは、電気羊のような模造動物を修理するヴァン・ネス動物病院で集配用トラックの運転手を務めており、1年前、放射能による遺伝子異常がみつかり生殖や地球外移住ができない特殊者となり、教祖ウィルバー・マーサーが教導するマーサー教を信仰している。ある日、ビルに女性が住み着いたので訪ねてみると、レイチェル・ローゼンと名乗ったが、いまは結婚してプリス・ストラットンに名前が変わったという。 ブライアント警視からリックに映話があり、残りの3体の居場所をつかんだので、速やかに処理するよう命令してきた。 史上初めて、1日で6体のネクサス6型を処理したリックは、疲れ切って帰宅すると、イーランから、彼の留守中に誰かが山羊を屋上から転落死させたと知らされる。その風貌から、犯人はレイチェルだと分かったが、疲れ切ったリックは死に場所を求め、荒野へ向かう。途中、マーサーに出会い、絶滅したはずのヒキガエルを発見する。砂まみれになったリックは帰宅するが、それが電気カエルであることが判明する。リックは意気消沈して深い眠りに陥り、イーランがカエルの世話をする。 AIと人間の違いとは――フィリップ・K・ディックによる結論は、冒頭でリックが電気羊の世話をする場面に記されている。私は本作を読んだあとAI研究に従事するのだが、今なら、その結論が理解できる。――以下、ネタバレになるので、これから本作を読む方は読み飛ばしてほしい。 アンドロイドの容姿は生身そっくりに造形され、記憶も脳ユニット(以下、AIと記す)に過去の記録が導入されており、人間との区別は難しい。唯一の違いは、リアルタイムの心理反応であり、これをフォークト=カンプフによって調べることができる。 ここで、イジドアのような特殊者の存在に注目が行く。 さて、子どもに、家庭や学校、地域のコミュニティを経験させ、運動や音楽を習わせ、食事や旅行に連れて歩き‥‥明確な学習データを与えずとも、おそらく本能的に備わっている学習システムが、これらの経験を取り込んで認知機能をアップデートするのだろう。逆に考えると、せっかく天賦の学習システムが備わっているのだから、いろいろな経験をさせることで認知機能が大きく拡張できるような気がする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.17 13:37:27
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