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あなたはプラネタリウムを見たことがあるだろうか――わが国はアメリカに次いでプラネタリウム投影機の設置台数が多く、日本プラネタリウム協議会(JPA)によると、年間のべ900万人の人がプラネタリウムを見ているという。これは東京ディズニーシーの年間入園者数に近い人数だ。 今年(2023年)は、光学式プラネタリウムが誕生してちょうど100年になる。それを記念し、天体望遠鏡メーカーであり、国内外に多くのプラネタリウムを納品している五島工学研究所が編者となり、プラネタリウム製造メーカーの社員や、プラネタリウム施設の運営や投映(解説)を行う解説員が、その誕生から現在までの移り変わり、仕組みや楽しみ方、魅力などを、余すところなく語ってくれる。 半球型のドームに星空を投映する光学式プラネタリウムは、1925年にオープンするドイツ博物館が、来館者に天体の運動を学んでもらうために、カールツァイス社が1923年に開発した「ツァイスI型」が最初の製品だ。当初はドイツの星空しか投映できなかったが、緯度を変更できる運動軸を設け、南半球の恒星原板を加え、世界中の星空を投映できる「ツァイスII型」は世界各地に輸出され、1937年に大阪市立科学館にも納品された。 光学式プラネタリウムの面白いところは、プトレマイオスの天動説を、最新の科学技術を使って忠実に再現しているところである。日周運動、緯度回転、歳差運動はもちろん、太陽や月、惑星の運動も機械的に(のちにコンピュータが支援動作する形で)再現できる。 その後もプラネタリウムは進化していく。 1981年に登場したデジスターは、ビデオプロジェクターの映像を、魚眼レンズを使ってスクリーン全面に映すもので、コンピュータの画面をそのままスクリーンに映し出すことができた。光学式プラネタリウムでは表現できない、宇宙空間で見た星空をも投映できるようになった。のちにデジタル式プラネタリウムと呼ばれるようになる。 また、2012年に発足した日本プラ寝たリウム学会は、毎年11月23日の勤労感謝の日に、「全国一斉熟睡プラ寝たリウム」というイベントを全国各地のプラネタリウムで行っている。プラネタリウムで眠くなる方は参加してみてはいかがだろうか。 私が通っていた中学・高校には五藤光学研究所のプラネタリウム「S-3」(ビーナス)があった。1970年に設置されたもので、投映できる恒星は4,500個。操作法を学んだ生徒が操作することが許されており、南半球への旅はもちろん、毎年の学園祭では冨田勲のシンセサイザーサウンドを流しながら歳差運動軸を使ってギリシア神話の時代に遡ったり、SF映画に登場する未来の星空を案内した。 渋谷の五島プラネタリウムにもよく足を運んだ。金曜日の最終投映「星と音楽の夕べ」――彼女がいるわけでもないのに、クラシック音楽を聴きながら宇宙へ思いを馳せた。 プラネタリウムは、見る者も操作する者も、自然科学を学ぶ楽しさを教えてくれる最高の教材である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.14 12:46:49
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