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カテゴリ:なんだこりゃ
パンダ母が30年以上、雨の日も風の日も続けてきた「契」の集金。
詳しくはよくわからないが、 10人集まって、一人を助けましょう。 そんでもって、それを10回やって、 みんな順繰り順繰り助け合って、ちょびっとだけ儲けましょう。 という、相互扶助の精神と仲間内の信頼関係があって、初めて成り立つシステム。 参加人数は何人と決まってはいないけれど、 参加人数が多ければ多いほど、利子も多く付き、 契を取り締まる親分の懐も潤うらしい。 パンダ母(親分)に言わせると、 「普通の主婦が外に勤めに出たって、こんな稼げるわけがない。」 そうだ。 特に、パンダ母が声をかけるのは、一般家庭の主婦ではなく、 全て、商売人なので、その日のうちに現金が入ってくるので、 うまく回れば、美味しい副業になるらしい。 そう、うまく回ればね。 けど、このご時世、商売がうまくいかなくて、 集金に行っても、なんだかんだと言い訳されて、回収が滞ることも多い。 滞るどころか、自分の配当の時だけさっさともらって、 残りのお金を払わずにトンズラする奴もいる。 親分や、他の参加者のことを思ったら、 絶対そんな真似は出来ないはずなんだけど、 実際にはいる。 さて、今日の昼前、パンダ母が 「ちょっと、松炭まで行ってくるよ。」 と、言い出した。松炭(ソンタン)というのは、隣町で、 わたしが通うパン教室があるところ。 ってことは、25分くらいバスに乗らないといけない。 「え?タクシーでですか?」 「いや、バス。」 「しんどくないですか?腰大丈夫ですか?」 「大丈夫だろう。」 「松炭に何の用事でですか?」 「ん~?お金もらいにね~。」 へぇ~、松炭からも契に参加してる人がいたんだ・・・ 「じゃ、バス停まで、車椅子に乗っていきますか?」 「ああ、じゃ、そうしてもらおうかね~。」 と、バス停まで、車椅子を押した。 が、松炭行きのバスの路線がいくつかあって、 何番のバスに乗ったらいいのか、よくわからない。 「お義母さん、わたしも一緒に行きましょうか?」 「え?昼からどこも行かなくていいのかい?」 「あ。。。ええ。。。」 「じゃ、そうしてくれるかい?」 ところが、車椅子の重いこと、重いこと。 韓国バスの昇降口の高いこと、高いこと。 おまけにバスの運転手はたいがい、せっかちでしょ? 焦ったわ~。 後ろから、バスを待ってたお客さんが、うんしょ!と押してくれて、 ようやく、パンダ母も奥さんも車椅子も無事乗車。 バスに揺られて20分。 松炭の町に着いた。 ところが、パンダ母の目が泳いでいる。 「え~っと・・・市場、市場っと・・・。」 そんでもって、通りすがりの人に、市場の入り口を尋ねている。 ??? 携帯で呼び出せばいいのに・・・ 「奥。ここをまっすぐ行ってみようよ。」 行ってくれ、じゃなくて、なんで、行ってみよう、なの?? とにかく、パンダ母が指差した方向に向かう。 「ちょっと、止まって!」 小さなお餅屋さんの前で車椅子を止め、パンダ母は、 じ~っと店内をうかがう。 餅食べたいのか? 「違う・・・」 え?何が?? 「じゃ、こっちの通り行ってみて。」 市場の中の別の通りを指差すパンダ母。 だから、なんで、行ってみて、なんですか?? 携帯は~??? 「果物屋か、トッポッキ(餅のおやつ)の店が無いか、よく見ながら行って。」 え~?相手の住所とか電話番号とか知らないの~??? と、内心ブーイングが湧き起こったその時、 信じられない話が始まった。 「そのアジュンマ(おばさん)、元々は市内で商売してたんだよ。 それがさ、契のお金もらうだけもらって、トンズラしたんだよ。 でも、悪いことはできないもんだね~。 つい最近、アジュンマを松炭の市場で見かけたって人がいてさ、 それ聞いて、追いかけてきたって訳よ。」 え・・・? はっきり会えるって当ても無く・・・? 「・・・じゃ、この市場の中の、果物屋さんとか屋台を探したらいいんですね?」 「ああ、多分、出せたとしても、小さな店だから、すぐ見つかると思うよ。」 奥さん、ちょっとした探偵気分で、結構真面目に探したわよ。 でも、それらしきお店も人もいないんだよね~ 市場の中の通りは全て探したけど、見つからない。 半分あきらめて、市場を抜けて大通りに出た瞬間。 パンダ母が、 「いたよ!!!」 思わず、車椅子を押す手を止めて、通り向こうの小さな屋台に見入った。 「間違いない。あのアジュンマだよ。」 「お義母さん、行きますか?」 パンダ母がうなずいた。 後は、奥さん猛ダッシュ。 ここでアジュンマに逃げられてはなるものか!! ぜえぜえ息を切らして、屋台に到着。 パンダ母が 「ちょっと!あたしだよっ!!!」 とアジュンマに声をかけると、アジュンマ、一瞬、きょとんとした顔をして、 すぐに、泡吹いた表情を見せた。 「あら、あら、ちょっと、どうやって来たのよ~~~!」 「どうもこうも無いわよ。一体、契のお金いつ払ってくれるのよ? どうなってんのよ?!!!」 慌てながらも、アジュンマは、 家族が病気でソウルの病院に入院しているだの、 パンダ母には申し訳ないことをしたと、いつも気になっていただの、 急な引越しだったので、バタバタしていて、パンダ母の携帯番号を失くしただの、 スルスルスルスルと、口をついて出てきた。 うわ~、普通に息をするように、嘘をつく人って本当にいるんだなあ・・・ と妙に感心しながら、わたしはずっとパンダ母とアジュンマのやりとりを見ていた。 「じゃ、いっぺんには無理でも、ちょっとずつでもちゃんと返してよね。」 「そりゃ、もちろんよ~。」 「とりあえず、今日も、ちょっとでもいいから、お金もらえないかしら?」 「え~、今日は勘弁してよ~。月末にしてよ~。」 すげ~っ。パンダ母の取立てをかわしたよ、アジュンマ。。。 だけど、これで黙ってるパンダ母じゃないよね。 「あ~、お腹空いてきちゃったわ。」 と、目の前で湯気立ててるジャガイモをむんずとつかんだ。 そして、ほおばった。 「はい、食べなよ。」 と、わたしにもくれる。 あ、いや、いいんですか?商売の邪魔じゃないですか? とはらはらしつつ、奥さんもふかしたジャガイモをほおばった。 引き続き、パンダ母は、サツマイモにも手を伸ばした。 「はいよっ。」 やはり、わたしにもサツマイモ。 それから、パンダ母、トウモロコシも食べ始めた。 ひょっとして、取立ての分、食って元とろうって算段なのか?!! TVチャンピオンみたいになってきたぞ・・・ ふかし物の中では、サツマイモが一番美味しかったらしく、 パンダ母は2つ目のサツマイモにGO~! わたしにも食べろと目で訴えていたが、さすがのわたしも、 芋ばっかそんなに食べられるもんでもなく、お断りした。 すると、パンダ母は、すっくと立ち上がり、 「えっと・・・じゃジャガイモ1万ウォン分と、 かぼちゃときゅうりと唐辛子とナスで1万ウォン分と、 それから、ふかしたジャガイモとサツマイモとトウモロコシ1万ウォン分 全部で3万ウォン分、包んでちょうだい。 今日、財布持ってないから、ツケといて。」 と、屋台にあるものほとんど全てを一つ一つ指差した。 でっかいスーパーの袋、合計4つにもなった。 あの・・・ これを一体どうやって持って帰れと・・・?? 「じゃ、月末、また来るから。ちゃんとお金用意しといてよね。」 パンダ母は杖をつきながら、バス停へと向かう。 わたしは、車椅子に、パンダ母の代わりに野菜たちを乗せて、 ゴロゴロと、同じくバス停に向かった。 すぐにバスは来た。 が、すぐには乗れない奥さん。 そして、すぐには降りられない奥さんと車椅子と野菜たち・・・ 重い・・・重過ぎる・・・ パンダ母もゆっくりとバスを降り、 「じゃ、あたしゃゆっくり歩いてくから、野菜お願いね。」 引き続き、車椅子に野菜たちを乗せて、家路に着いた。 パンダ母は当分おかずには困らないと、ご機嫌だったが、 わたしはもう疲れてヘロヘロで、夕飯の支度だけはしたけれど、 ご飯の後は、肩が痛くて痛くて、後片付けもパンダにまかせて、 2階に下りてきてしまった。 実家の兄嫁さんとサザエ姉に、ちょびっと愚痴メールを送っていたら、 子パンダが、隣の部屋から 「お母さん~、お母さん~。」 と呼ぶ。 うわ~、ごめん、子パンダ、今日は絵本も勘弁してくれ。 一人で寝てくれ!!! 「お母さん、ちょっと来て~~~。」 「用事があるなら、お前が来んかいっ~!!!」 「お母さんが来ないとダメなの~。」 ??? 何だろうと思って、まだツノ出したまま行ってみると、 「お母さん、ここに寝転がって。 肩揉んであげる。」 いや~ん。子パンダ~。いつものことながら、ごめん~~~。 ごめん、ごめん、ごめん、ごめん~~~~。 奥さんこの日は泣き寝入り。 子パンダに寝かしつけてもらったよ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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