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みなさま、ごぶさたしております。
夏休みに入り、リスザルの、塾に、部活(事情があって理科部に代わりました)に、剣道の道場通いにと忙しい毎日に、すっかり振り回されております。 十日あまりほったらかしなので、何か更新せねばと、かつて応募して落選した駄作を掲載します(苦肉の策)。 読み流してやって下さいませ。 「生きてまっせ」のお知らせ代わりです。 「他人のそら似」 高井くんと上橋くんは、「他人のそら似」の見本だ。 長丸い顔に、細いタレ目とメガネ。 柔道一直線な体型を学ランに包んだら、担任教師から親友までもが、一度は間違う。 ある日、英語の教師が二人に言った。 「おまえら、実は双子でしたとかいうんじゃないだろうな」 高井くんと上橋くんは、顔を見合わせる。 お互い、見えないキズに触られた瞬間の顔で。 「あ、いや、実はちょっと」と高井くん。 「内緒にしてたんですけど、事情があるっつーか」と上橋くん。 「そ、そうか、いや、すまん」 教師は、詫びの言葉とともに、慌てて片手を上げた。 すたこらと廊下を去ってゆく教師の後ろ姿を見ながら、ふたりはにんまりと顔を見合わせる。 「センセー騙すなよ、悪いヤツ」 「すぐ嘘だってわかるって」 肘で突き合いながら、ふたりの笑い声がリンクした。 放課後。 校長室では、緊急に招集された研究機関の職員が、教師達と額を突き合わせていた。 「これはヒジョーにマズイです」と、研究機関の職員。 「彼らはいつ、事情を知ったのでしょうか」 「私たちも彼らのご両親も、機密に関する内容は一切表に出ないよう、それは厳重な管理を、はぁ」 校長が、額の汗をハンカチで拭う。 「記憶の処理に何か不手際でも……」 「問題はない!」 研究機関の職員は、気色ばんだ。 上橋くんは、十歳の時、列車事故に遭っていた。 折り重なる遺体や電車の残骸の中、彼は右手をもぎとられた状態で救出されたが、その右手は、発見されなかった。 その翌日、同じ場所から、なんと、上橋くんを等身大コピーしたような少年が救出されたのだ。 もちろん、彼に一卵性双生児の兄弟などいない。 同じ頃、上橋くんには見事な右手が生えていた。 彼らは体の隅々まで研究された。 そうして、もう一人の上橋くんは記憶を操作され、同じ事故で子どもを亡くした、高井さん夫妻に引き取られたのだ。 「プラナリアの再生能力を持つ少年、ですか」 「まさか、同じ高校に来るとは思いませんでしたが」 「もとは同じ人間だったわけですからな」 その時、職員室の電話が激しく鳴った。 受話器の向こうから、ノイズ混じりの緊迫した声が告げる。 「こちら警察ですが、そちらの生徒とおぼしき少年が、爆発事故で重傷を……あ、名前は高井……えぇ、左手の指を三本吹き飛ばされまして、病院へ搬送ちゅ……あの、もしもし?」 〈了〉 弟の高校時代の友達関係からヒントを得たのですが、あまりにも説明的な文章になっちゃいましたね。 字数制限もさることながら、難しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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