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テーマ:癌(3518)
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父が肺ガンと診断されて半年が経った。
治療は何もしていない。 経過をみているだけ。 昨日、実家に食べ物を届けたのだが、母がお疲れモード。 もともと不機嫌っぽいのだが、昨日はいつもより更にひどかった。 父は爆睡していた。 いつもなら私の気配を感じて目をさます。 ベッドのそばで父にヒーリングする。 軽くタッチをするのだが本当に気がつかない。 「昨日、全然眠れなかった。」と母。 また愚痴が始まる。 どうやら父がトイレに行ったのだが転んでそのあと自力で立とうとしたのだがたてなかったらしい。 イスにつかまって立とうとするのだがだめで、そのまま寝ようとしていた。 ベッドに連れて行こうとするのだが行きたがらない父。 どうやら布団の上でおもらしをしたらしい。 「おまえが布団の上に水をまいたから寝られない。」 その言葉にカチンときた母。 だから・・・ しょうがないって・・・ 痴呆もかなり進んでいる。 ディサービスでお風呂に入ってきた父。 帰ってきて、いつもはあまり話さなかった父がいろいろ話してくれたという。 私が買ったフリースを着ていったら そこにいる、お婆ちゃん達にいいのを着ているとほめられたとか・・・ いつもはだんまりなのにおかしいと母も思ったらしい。 父がなかなかベッドに行かなかったので母も眠れなかったらしい。 そうか・・・ 私が知らない間にかなり大変なことになっている。 癌はかなり大きくなっていて、それでも痛みを訴えない父にドクターは首をかしげる。 父が目を開けた。 「おお・・・おまえ、来てくれたのか・・ お前が来てくれるのが嬉しい・・・」 半分、泣きながらそう言ってくれる父。 「また、そんな!甘えて!!」 母は不機嫌になる。 「さて・・・」 そう言ってベッドから降りようとする父。 すごく時間がかかっている。 一週間しかたっていないのに・・・ ようやく立って、ヨロヨロしながらトイレに行く。 なかなか戻ってこないので母は心配になっている。 母は台所でめずらしく料理をしていた。 やっと帰ってきた父、ベッドに腰掛けて言った。 「仕事に行くわ。」 退院した頃はよくそう言っていた。 また始まっちゃったか? 「そうか・・・じゃ、ご飯たべよっか~。」と私。 食べているうちに忘れるかな?!そう思っていた。 食べ終わると 「靴下は?」と父。 足が寒いのか靴下をはいて寝ていることが多い父。 「寒いの?」と私が聞く。 「今から、仕事いかんならんから。」 あら・・・忘れてなかったか・・・ 父が自分の手を見ていた。 爪がのびてるな・・・・ 「そうや、爪切ってあげるよ。」と私。 そっと手を差し出す父。 なかなか分厚いのでうまく切れない。 爪を切る音だけが響き渡る。 こうやって爪を切るのなんて初めてだ。 父はたまに自分でハサミで切っていたようだ。 「初めてやね、こうやって切ってあげるのも・・・」 昔は何でもこの手で作っていた。 なんでも出来た素晴らしい手。 今も同じ手なのに・・・・ 涙がとまらなくなってきた。 ポタポタおちてしまう涙に父は気がついていたろうか・・・ 「苦労したよね・・・この手。」 だまって手を差し出している父。 「今まで育ててくれて、ありがと・・・」思わず出た言葉だった。 「・・・」 「爺ちゃん、この手でたくさんの人に良いことしてあげたよね?!」 「うん。」 子どものように答える父。 本当に父は近所でも簡単な日曜大工程度ならちょこっと只でやってあげたりしていた。 危ないことだって頼まれればイヤとも言わずひきうけた。 「おうおう~、わかったぞ!」 いつもそう言っていた。 「爺ちゃん、今まで人にしてあげた分、今度は人にしてもらっていいんだよ。 ゆっくり休んでいいんだよ。 人の世話になることも大事なんだよ・・・」 そう言うと父はだまって布団の中に入った。 本当は外に出る体力なんてあるはずもない。 もうトイレにもいけないかもしれない。 寒さが父の元気を奪っていくように思えた。 「昨日、どうしたん?寝られなかったん?」と私が聞くと・・・ 「仕事の算段しとった。」 「ああ~、そうやったんか・・・ 夜はね、そんなこと考えちゃだめだよ。 婆ちゃんが心配で寝られなくなるからね。 婆ちゃんのためにも夜はやめてね。」 「・・・・うん。」 そう言ってもまたやるかな?! トイレまで廊下も長いのできつい。 障害物もあるし。。。 もう限界にきてるか。 私が泊まり込むのがいいのかもしれない。 しかし、急にどうしちゃったかなぁ・・・ 何気なくディサービスのお通いバッグをみた。 連絡帳がはいっていた。 なになに・・・? 本物のわらでワラジを作られました。 あとはゆっくり休まれていました。 なるほど・・・・ すっかり昔モードに入っちゃったわけか・・・ 確かにあの環境でそこまでやっちゃうと何でもできるような気持ちになるよね。 周りは車いすの人が多いだろうし・・・ そういうことか・・・ 今まではナイロンロープで作っていたようだが、いよいよ藁が用意できたってことか。 きっと懐かしかったんだろうな・・・ そして今朝、母から電話があった。 夕方からひとつも起きなかったらしい。 トイレにも行かなかったらしい。 昨日はおむつをはいていて何度かトイレに通うのを見たが・・・ 「もう、おきあがれなくなるかも・・・」 母がつぶやいた。 いよいよか・・・ 私もまだ涙がでそうになる。 「お前も、もうあきらめなさい。」 いつになくしっかり口調の母。 そうなのだ。 私もずっと覚悟はしているつもり。 でもやっぱり泣ける。 ずっと魂はいっしょだと考えるけど、涙はとめられない。 元気だった頃の父の姿が離れない。 嫌いだったと思ったが私は本当にとんでもなくファザコンだったようだ。 私が一番手放せないでいる。 この父への思い。 父が苦しまないことだけを祈りたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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