フィレモンへの手紙
<珠玉の書簡>と言われている。ただ1章しかなく、ボクたちが普通に書くような長さ。思想内容は濃厚であり、繰り返し読んでも教えられるところが新しく響く。2000年前の書簡だが、近代を呼び出すような人間観の高さを感じる。ここに出てくる「オネシモ」は、フィレモンの元を逃げ出した奴隷。周り巡ってオネシモは牢獄中のパウロに出会い、彼の指導を受ける。パウロは彼を「私の心」と呼んで、フィレモンの所に返す。「お~い、オネシモが帰ってきたぞ」コロサイ教会の一同は驚き、ざわつく。オネシモはフィレモンの前に立つ。ほかの人たちは、固唾を呑んで見つめる。オネシモはおずおずと二通の手紙を差し出す。そのなかの1通は、おそらく「コロサイの信徒への手紙」だろう。もう1通は、これ!フィレモンへの手紙(全文・新共同訳聖書)◆挨拶 1 キリスト・イエスの囚人パウロと兄弟テモテから、わたしたちの愛する協力者フィレモン、2 姉妹アフィア、わたしたちの戦友アルキポ、ならびにあなたの家にある教会へ。3 わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように。 ◆フィレモンの愛と信仰 4 わたしは、祈りの度に、あなたのことを思い起こして、いつもわたしの神に感謝しています。5 というのは、主イエスに対するあなたの信仰と、聖なる者たち一同に対するあなたの愛とについて聞いているからです。6 わたしたちの間でキリストのためになされているすべての善いことを、あなたが知り、あなたの信仰の交わりが活発になるようにと祈っています。7 兄弟よ、わたしはあなたの愛から大きな喜びと慰めを得ました。聖なる者たちの心があなたのお陰で元気づけられたからです。 ◆パウロ、オネシモのために執り成す 8 それで、わたしは、あなたのなすべきことを、キリストの名によって遠慮なく命じてもよいのですが、9 むしろ愛に訴えてお願いします、年老いて、今はまた、キリスト・イエスの囚人となっている、このパウロが。10 監禁中にもうけたわたしの子オネシモのことで、頼みがあるのです。11 彼は、以前はあなたにとって役に立たない者でしたが、今は、あなたにもわたしにも役立つ者となっています。12 わたしの心であるオネシモを、あなたのもとに送り帰します。13 本当は、わたしのもとに引き止めて、福音のゆえに監禁されている間、あなたの代わりに仕えてもらってもよいと思ったのですが、14 あなたの承諾なしには何もしたくありません。それは、あなたのせっかくの善い行いが、強いられたかたちでなく、自発的になされるようにと思うからです。15 恐らく彼がしばらくあなたのもとから引き離されていたのは、あなたが彼をいつまでも自分のもとに置くためであったかもしれません。16 その場合、もはや奴隷としてではなく、奴隷以上の者、つまり愛する兄弟としてです。オネシモは特にわたしにとってそうですが、あなたにとってはなおさらのこと、一人の人間としても、主を信じる者としても、愛する兄弟であるはずです。 17 だから、わたしを仲間と見なしてくれるのでしたら、オネシモをわたしと思って迎え入れてください。18 彼があなたに何か損害を与えたり、負債を負ったりしていたら、それはわたしの借りにしておいてください。19 わたしパウロが自筆で書いています。わたしが自分で支払いましょう。あなたがあなた自身を、わたしに負うていることは、よいとしましょう。20 そうです。兄弟よ、主によって、あなたから喜ばせてもらいたい。キリストによって、わたしの心を元気づけてください。 21 あなたが聞き入れてくれると信じて、この手紙を書いています。わたしが言う以上のことさえもしてくれるでしょう。22 ついでに、わたしのため宿泊の用意を頼みます。あなたがたの祈りによって、そちらに行かせていただけるように希望しているからです。 ◆結びの言葉 23 キリスト・イエスのゆえにわたしと共に捕らわれている、エパフラスがよろしくと言っています。24 わたしの協力者たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからもよろしくとのことです。25 主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊と共にあるように。