「利休にたずねよ」山本兼一
「利休にたずねよ」山本兼一 PHP研究所どなたかが推薦していたので、入手して読んだ。茶の湯に生涯をかけた千利休どこまでが史実で、どこまでがフィクションかわからなかったが読み応えのある小説だった。一つのことをとことん追求する人生なら茶の湯より、神を求め、神を追求することが良いなと思った。つまらぬ生き方をした。来し方を思い起こせば、悔いの念ばかりが湧いてくる。衰えた肉と骨を苛むのは、砂を噛む虚しさである。茶の湯など、何ほどのことか。こうして無明の闇を見つめていると、茶の道に精進してきた自分の生き方が、まるで無意味だと思えてくる。 (139頁)その悔いがうたかたとなって心の闇に浮かんでは消える。若い頃こんな煩悶はすぐに消え去るだろうとたかをくくっていた。老境にさしかかり、ますます悔いの思いは深まるばかりだ。たとえ悔いに満ちていようとも、今日という新しい一日が始まる。心にどんな闇を抱えていても、どうせなら気持ちよく生きたい。なすべきことは、茶の湯しかない。(142頁)