パスカルと義弟の洗礼
「パスカルを読んでみて!」義弟の生前、奨めたことがある。弟が他人には触らせなかった書棚にパスカルの解説書があった。手に取るとていねいに読んだ跡がある。赤線を引き、所々「?」も記してある。彼の読書跡をたどりながら読む。鹿島 茂 という人が書いた。パスカルの人間論への興味が綴ってあるが肝心のパスカルの信仰についての言及がなかった。日本人のパスカル論にはこのタイプが多い。この書物は,義弟を神の元に連れてくれなかった?今年の初めだったか医師との今後の治療について話し合ったとき医師が限りある命について問いかけると義弟は隣のボクを指して「ここに牧師さんがいますから」と事もなげに言う。それが彼の信仰告白だったと信じ、なくなる数日前に、彼の姉(ボクの妻)と行って洗礼を授けた。言葉はもう出なかったが眼を開いて、その眼は「姉さん夫婦にすべてを任せます」と語っているように見えた。