文楽錦秋公演 姉妹の決意
仕事の合間の休日に文楽を見に行ってきた。今日は碁太平記白石噺(ごたいへいきしろいしばなし)(豆知識)宮城県の白石市にある伝承で、藩の剣術指南の侍がささいなことで百姓を無礼うちにした。百姓の娘の姉妹が5年をかけて修行して親の仇を討ったというものがある。これに似た話が全国にあって、音頭や語り物として 流布している。かよわきものが、悪逆なものに打ち勝つというのが庶民の心をとらえたのだろう。その話をもとにして作られたもので、娘を助ける剣術家が、江戸幕府に反乱を計画した由井正雪という奇想天外な話になっている。今回はこのお話の発端の部分のみが演じられた。 (前提)代官団七は悪人で一味の者と昨日城中にある品物を盗み出そうとした。それがみつかり騒動になった。一味の者が殺され、 団七 は自分は無関係だと死んだ者にすべての罪をなすりつけたが、城から持ち出した、妖術に使うための天眼鏡をこっそりもっている。 田植えの段村では百姓が田植えに精を出している。 昼が来たのでみんなが休みに田から去ったところで、代官の団七が家来と現れ、持っている天眼鏡の隠し場所を探している。うかつにもっていると、盗みがばれるからだ。田んぼの片隅に穴を掘って隠す団七だった。そこへ、百姓余茂作が娘と現れ田植えを始めようとする。余茂作の家は妻が病で働き手が減り看病に手をとられるので、他より作業が遅れているのだ。少しでも時間を稼がねばと思っているが、妻の薬の時間なので、娘おのぶを家に帰す。田植えを始めると天眼鏡が沈んでいるのを見つけ、なんだこれはとしげしげとみている。団七が戻ってきて、その天眼鏡はわしのだから返せと迫る。余茂作は、「これはうちの田んぼにあったものだから、うかつに人には渡せない。まずはお城へ届けて吟味してもらわねば。」そんなことをされては大変なので、団七は家来とともに余茂作を切り殺す。母に薬を飲ませて田んぼに戻ってきたおのぶは、無残に殺された父親と側に立っている団七を見つけとっさに「お代官様がうちの父ちゃんを殺した!」と叫ぶ。村の衆が集まってきて、団七に詰めより大騒ぎになる。そこへ、団七の弟が隣村で切り殺されていたという知らせを、家来がもってくる。とっさに団七は不逞の浪人が辻斬りでもして歩いているのだろう、余茂作も弟も辻斬りにやられたのだとみんなを言いくるめて去っていく。浅草雷門の段「どじょう」と呼ばれる大道芸人が手品をしている(実際からのざるから花をだしたりする)金が集まったので仕事をやめて酒を飲みに行く。無頼漢の観九郎が「どじょう」の行方を捜している。観九郎は貸した金をとりたてようとしている。待つ間茶店で一服するのだった。そこへ巡礼姿のおのぶが登場し、茶店の主人に吉原の場所を聞く。なんでそんなところに用があるのかと主人が聞くと、「うちの姉は吉原というところで偉い花魁になっているらしい。故郷の父母が死んでしまいその姉を頼ってここまできた 。」と言う。主人は今店の座敷にいる人は、吉原の揚屋の主人だからその人に聞いてあげようと中に入る。横で聞いていた観九郎は、おのぶに「わしがその姉さんに会わせてやろう。ただ吉原に入るには吉原で奉公しなければならない。他人が連れて行っても奉公できないから、わしのことを伯父さんと呼べばうまくいくから。」とたぶらかす。茶店の主人から話を聞いて出てきた揚屋の主人聡六は、観九郎が伯父で姪を吉原に奉公さすといううその話を承知で、50両出しおのぶを引きとる。「どじょう」は一部始終を物陰で聞き、あいつのあぶく銭をかすめ取ってやろうと考える。50両が手に入ってほくほくでほろ酔い機嫌の観九郎のそばに、顔うどん粉で白塗りにして、どこかで捨てられたぼろぼろの僧衣を身につけて登場する。「私は賽ノ河原で、子ども守る地蔵尊じゃ。昔はやり病で死んだそなたのこどもも守っているぞよ。、菓子を与えたり色々世話した費用が12両あまりになっている。それを受け取りにきた。」半信半疑ながらも、子どもの供養になるならと金を差し出す観九郎。どじょうはさらに「3年前に死んだそなたの父親からの言伝も持ってきた、地獄の釜で茹でられているがその燃料代や針の山に登るためのわらじの費用、30両余りかかっている。これを払わねばわしはますます地獄で責められることになる。このお地蔵さまに渡して楽にしてほしいと言っているぞ。」さすがに金を出し渋る観九郎であったが、「わしを疑うのなら、生きたまま地獄に連れていくぞ。」と脅されとうとう金を差し出すのだった。最初は凄惨な殺しで悪党の悪さが感じられる。次の場面は滑稽さで笑わせる場面