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カテゴリ:本(小説以外)の話
基本的にあまのじゃくな性格なので、大ヒットでテレビでよくとりあげられる、とか
流行語になったりする本は、あまり読まないほう・・・。 内容が気になる場合は、話題になる前に読むか、ブームが去ってから読むか・・・という感じです(笑) ですが、サイト運営、ネット通販関連という職業柄、これは読んでおこうかなと話題の新書『ウェブ進化論』を買ってみました。 簡単にかいつまんで説明できる内容ではないので、細かい内容の説明はしませんが、序章の「本当の大変化はこれから始まる」という言葉が本書のメインテーマです。 インターネットの「こちら側」と「あちら側」という概念や、「ロングテール現象」「Web 2.0」といったキーワードはインターネットに関係する仕事をしている以上、知っておかなければならないもので、それらを包括的に説明しているこの本は、仕事という面ではとても役に立ちました。 インターネットに直接関わっていなくても、経営に関係する部署にいる人は、これからのビジネスモデルを考えていく上でも読んでおいたほうがいいかと思います。 しかしながらプライベートな面では、そのインターネット至上主義の論調にかなり反発を感じながら読みました。 ウェブ社会はもはや、現代においてなくてはならないもう一つの社会となっているのは事実ですし、それが変化する際は社会も一緒に変容していくことを余儀なくされています。 私も仕事はもちろん、プライベートでもとてもよくインターネットを使います。 しかしながら、どれほどインターネット社会が発達しても、それはあくまでも「知」の世界であって、実社会ではありません。 本書のかなりの部分はグーグルがいかにすごい企業であるかの説明に費やされています。 でもグーグル本社の社員が全員博士号取得者であって、どれほど高い知能の集合であっても、インターネット空間では実際のものは何ひとつ生産されません。 グーグルのビジネスモデルがどれほどすぐれていても、収入源が広告費である以上、実社会で物が生産され、売買が行われなければなりません。 パソコンを作る工場があって、それを売る人たちがいて、発電所で電気が作られ、電気を供給するために働く人がいないとグーグルは見ることさえできない。 世界は広告と情報だけでは成り立たないのです。 長くシリコンバレーを拠点としている著者らしい視点で書かれた興味深い1冊ではありますが、それを受け取る私たちはそれだけを鵜呑みにして「インターネット社会はすごい!」と礼賛するだけではいけないように思います。 実社会で実際に体を動かし、本当に知っている人と生きたコミュニケーションを持った上で、新しい技術や社会を頭から拒絶するのではなく、常に関心を持ち、うまく使いこなしていきたいなあ、というのがこの本の率直な感想です。 ヴァーチャル社会にどっぷり浸かったネット礼賛人間にもなりたくないけど、知ろうともせずに新しいものをただ拒否するだけの年寄りにもなりたくないな・・・。 公私を問わず、積極的にインターネットに関わっていない人には、ちょっと内容がわかりづらいかもしれません。 基本的な用語もわからないような、ネットに疎い上司に読ませるのはちょっと無理かも・・・。 インターネットの入門書ではなく、あくまでも次のウェブ時代を考察した本です。
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Last updated
April 10, 2006 04:02:21 PM
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