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テーマ:本日の1冊(3692)
カテゴリ:本(小説以外)の話
先週、ついに日本の合計特殊出生率が過去最低の1.25を記録したと報道されていました。
少子化対策というのは本当に難しい問題で、仮に成功したとしてもせいぜい「下げ止まり」で、 増加に転じるのは至難の技のような気がします。 大体、政府の少子化対策ってなんか的が外れているような・・・ 小倉千加子の『結婚の条件』は、あの酒井順子の『負け犬の遠吠え』と同じ2003年に発行された本です。 どちらも『結婚しない女性』をテーマにとりあげていますが、内容的には断然『結婚の条件』のほうが面白いです。 『負け犬の遠吠え』は結婚しない女性を「本当は人生を楽しんでるけど、そういうと周りがうるさいから、自分からおなかをみせておこう」というスタンスで書かれた軽いエッセイ的なもので、『負け犬』というインパクトの強い言葉にひっぱられてベストセラーになったに過ぎないような程度の内容でした。 『結婚の条件』は著者が大学の講師でもあり、その内容は講義のようです。 といっても、堅苦しいものではなく、現代の女性と結婚について、データを織り交ぜながら、かなりの辛口で論じます。 それが「そうそう!そうなんだよね!」という感じで、女性としてとっても共感できるのです。 自分の中で、なんとなく思っていたことを、きちんと論理的な文章にしてもらった快感が味わえました。 大体、保育園を充実させる、なんていうのが、子供を産むきっかけになる人なんて、今の日本では多分少数。 少子化を牽引しているのは、女性の非婚、晩婚が進んだ結果ともいえますが、「結婚したら夫の収入だけで十分暮らしていける人と結婚したい」と思いつつ、そんな相手はなかなかいないので、結婚を逡巡している女性のほうがたくさんいるのかも・・・。 日本で女性が本当に求めているのは「子供が生まれても安心して働ける社会」ではなくて、「子供が生まれたら夫の収入だけで普通に暮らしていける社会」で、しかもその「普通」が「持ち家に住んで、車を持って、子供にいくつか習い事をさせて、子供を中学から私立の学校に入れて、年に1回くらいは家族でハワイに」といったハードルの高いもの。 その幻想と折り合いをつけられた人と、幻想を実現させられる人が結婚していくのかな・・・なんて思ったり。 小倉千加子の文体が、断定的で女性像も類型にカテゴライズされているので、多少「そこまで言うことないんじゃないの」とか「極端すぎる」と思う箇所もなきにしもあらずですが、それを差し引いても十分面白い1冊です。 少子化対策をたてる立場の方々には、ぜひ一度読んでもらいたい本でもあります。 これを読んでピンとこない人は、少子化対策を立てても税金の無駄遣いになる恐れが・・・。 といっても、これを読むと少子化解決への糸口がみえてくる訳ではなくて、むしろ「もうどうにもなんないかもね」という諦観がわいてきます。 世界規模でみるならば、人口減少はむしろ好ましいこと。 もうあきらめて、現役世代が少なくて老人が異常に多い過渡期の社会をいかにして乗り切るか、というほうにお金を使ったほうがいいかもしれません。 ちょっと長いのですが、目次だけでもかなり面白いので載せておきます。
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Last updated
June 8, 2006 06:52:29 AM
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