カテゴリ:人とのふれあい(people)
今年も、オランダのニシンの季節がやってきた。 ニシンが解禁になると グランドセントラル駅の オイスターバーに飛んで行って、ニシンを食するのが 私たち夫婦の毎年の行事である。 数年前までは、オイスターバーに行ったら ちょびひげのおっちゃんのカウンターに座るのが ずっと、お決まりだった。 けれども、ちょびひげのおっちゃんがいなくなってしまってからは、 (空いていれば)マリーのカウンターに座るようになった。 今年は、テキサスに行っていたので 解禁日には、行くことができず すっとんでいったのは、最後の週になってからだった。 その日も、マリーのカウンターに座って 「マリー。ニシン4つと ニューイングランド風クラムチャウダー2つ。お願い。」 と、頼む。 隣のカウンターには かわいらしい花柄の古風なワンピースに かわいらしいアクセサリーをつけた女性が座っている。 こういう格好をしているのはたいてい南部の女性だ。 マリーが、彼女に説明をしている。 「今日は、駅のスチームが壊れていて、 カキのチャウダーが作れないのよ。 クラムチャウダーは、作り置きだけどね カキのチャウダーは、作り置きしないからね。」 「明日になったら、なおってると思う?」 思った通り、女性はテキサスなまりで答えている。 「さあ、100年前のスチームだから、私にはわからない。 毎年、楽しみにきてくれてるのに、悪いね。」 女性は、親戚を訪ねて、毎年ニューヨークにきては 毎年かならず、マリーのカウンターに座って カキのチャウダーを食べるらしかった。 「ねぇ。貴女たち、何食べているの?」 女性が話しかけてくる。 オランダニシンのことを説明した後、私は続ける。 「ねぇ、私、先週はテキサスにいたのよ。」 「あらあら、テキサスのどこにいたの? 私、テキサス出身なのよ。○○と○○の間。」 彼女の街が、私の行っていた場所に近かったので パリス・コーヒーショップの話をしてみる。 「テキサスに行ったら、やっぱりビスケット食べなくっちゃって思って パリスに行ったの。知ってるかしら? ただのダイナー(食堂)よ。おしゃれな場所じゃないわ。」 彼女は、パリス・コーヒーショップを知らなかったけれど 「主人が、ビスケット大好きなのよ。 グレービーは、茶色、白? ああ、白なのね。 じゃあ、テキサスに帰ったら、さっそく行ってみるわ。 おかしなもんね。ニューヨークに来て ニューヨークの人に、テキサスのことを教えてもらうなんて。」 「このあたりに住んでるの?ここにはよくくるの?」 女性は、人懐っこく続ける。 オットが、マリーを知ったきっかけ(←クリック) を話すと、彼女はいたく感動して、 いい話を聞いた、いい話を聞いたと 何度も繰り返して言う。 「でも、マリーはもうそのことは覚えてないかもしれないわ。」 私がそう言うと、彼女は 「そんなことないと思うわ。マリーは何でも覚えているのよ。 きっと、セーターの夫婦って思ってるわ!」 と言った。 やがて、クラムチャウダーを持ったマリーが キッチンからやってくる。 「あなたたち、今年はくるのがちょっと遅すぎたねぇ。 ニシンは今週金曜日で終わりだよ。 水曜日にまた食べにおいで。」 マリーは、何でも覚えているのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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