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カテゴリ:こだわり
最近、夕飯を食べると居眠りをする、という悪い習慣がついてます。 ちゃんと後片付けをして、さっさと寝室に引き揚げることもあれば、 居眠りをしている間に、旦那が後片付けをしておいてくれることもしばしば。 (こういう旦那には感謝してます、ハイ。) ここ数日、今まで経験したことのない「肩こり」に悩まされ、 昨夜は夜中に起きて、あまりの痛みに鎮痛剤を飲みました。うーん、何だろう?
寝る前や、夜中に起きたとき、私は裏庭に出て夜空を見上げるのが好きです。 南カリフォルニアの夜空は乾燥しているためか澄んでいて、 月は白くきれいに光り、星には色がついていて、それらは「瞬く」のです。 それを見ていて、気がついたことがあります。
「切ない」という言葉、感情ではわかるのに、説明できなかった。 「哀しい」とも「寂しい」とも違う、「切なさ」。 「切なさ」は、頭では理解しているのに、感情が「あきらめきれない」ようなこと。 昨夜はふと、それは「執着」のせいではないか、と思いました。 どんなに理論的に結論を出しても、心のどこかで「割り切れない」とき、 人は自分の中の葛藤に驚き、悩み、「切ない」と感じるのではないでしょうか。
いつか、アメリカ人男性の友人が、彼が離婚したときのことを語ってくれました。 「僕は離婚したくなかった。 僕は家族を愛していたし、僕には家族が必要だったし、 長い時間をかけて築いた家庭を失うのが怖かったし、何よりも、僕は妻を愛していた。 と、その時は信じていたんだ。 でもね、今になって考えてみると、それは’愛情’ではなくて’執着’だったと思う。」 私は彼のこの言葉を一生忘れないと思う。 間違いなく彼は、「切ない」思いをしただろう。
ここカリフォルニアの離婚法は「破綻法」と言い、日本の「協議離婚」と違って 夫婦が離婚に同意する必要はありません。 結婚するときは同意が必要ですが、離婚するときは、 どちらか片方が「離婚したい」と申請すれば、遅かれ早かれ、その夫婦には離婚が成立します。 まあ、考えてみれば、それが自然かもしれませんね。 どちらかが婚姻の継続を放棄する、ってことは、その時点で結婚してる意味はなくなりますから。
もうひとつの難しい言葉は、「不倫」。 江國香織が著書「泣かない子供」の中で、 日本で意味する「不倫」を英語で説明しようとしたときの話を書いています。 一部引用すると、
「不倫」というのはもっと精神的な領域をもカバーする言葉で、 ADULTERYのように直接的ではないにもかかわらず、 言葉自体がすでに否定的な、陰湿な響きを持っているのだと しどろもどろになりながら言うと、あなたはすごく変な顔をして、 そんないやらしい言葉は英語にはない、と言ったでしょ。
その後、ちょっとした事件があり、彼女が泣いてしまい、こう結論付けた。
「不倫」ってもしかしたらそういうものかもしれないと思うのです。 本人にとってそれは悪いことでも悲しいことでもないのだけれど、 理屈のバリアをはずしてふと外側から眺めたら、 わけもわからず一ぺんに涙にくれてしまうみたいな場所に、 それはやっぱりあるんじゃないかって。
日本の本を読んでいると、ときどきドキッとするような表現に出会います。 自分の心の奥に、自分でも意識していなかったような感覚があり、 それに不躾に触れられたような驚き。 残念ながら、私の英語力では、それを洋書で感じたことはありません。
強く印象に残っている話をひとつ。 私が若い頃読んでいた女性ファッション雑誌には、必ず、と言っていいほど ゴーストライターの書いた、ちょっとした読みきり短編小説がありました。 あるとき、アメリカの無声映画に日本語の台詞をつけたときの話がありました。 I love you. を、日本語でなんと言うか。 翻訳家たちが頭を寄せて考えた挙句、
「死んでもいいわ。」
になったそう。素敵な訳ですよね。 感動したことを覚えています。
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