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とある店の前を通りがかったら、そこには通路沿いにお酢が山のように陳列されていた。
お酢など、今までブランドを意識したこともないが、 店の一押しなら、さぞいいものだろうかと足を止めたら、 見知らぬおじさんに声をかけられた。 「これ美味しいのよ」 お酢の瓶の一つを指差す。 「ホラ、(美味しいから)賞もとってるのよ」 私に見るように促す。 愛想笑いを浮かべてのぞき込むと、さらにプッシュして来られた。 「一度買ってみ、美味しいから」 「僕はね、別に(お酢のメーカーの)営業じゃないのよ、良いものをお勧めしてるだけ」 「ホントおすすめ、使ってみたらわかる」 一体どうしたことであろうか、 どうして私に酢を試させたいのであろうか、 おじさんは一歩も引かない。 「今日は、買う予定じゃないから・・・」 「きっかけだと思って。 使い良いよ、本当に買って後悔しないから」 私が戸惑っていると、そこに通りがかった品の良さそうなマダム。 「これ、本当に美味しいわよ」 貴女もか! 「これホンマ美味しいなぁ?」 「うん、美味しいねぇ」 私は二人に挟まれてしまった。 多分見知らぬ者同士の二人が、なぜこんなに意気投合しているのか、 ・・・そしてその二人から酢をプッシュされるという、何このポジション。 「これ賞を・・・」何度目かのプッシュ攻勢に、私はいっそ買ってしまうか、と諦めかけた。 その方が面倒がない。 私が買えば、「良いことをした」と思うであろう、二人の顔も立てられる。 ・・・だがちょっと待て、私は酢を買いたくないんだよ? 「瓶が重いから、今日は買いません。 いいモノお勧めしてくれてありがとう」 遂に強行突破を試みた。 一気に言って、次の言葉を聞く前に、その場を離れた。 離れてから天井を仰いだ。 善意に基づいた(と、推察される)押し売りは、とても苦手だ。 多分、・・・本当にあの人たちは良かれと思ったんだろう。 分かっているんだ。 いろいろ投影しちゃうんだ私は。 ・・・だけど。 思い返すとほんの少し、 あのお酢はそんなに美味しいものだったんだろうか?なんて気持ちも、残っていたりする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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