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  或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

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2016.12.25
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カテゴリ:カテゴリ未分類
とある店の前を通りがかったら、そこには通路沿いにお酢が山のように陳列されていた。
お酢など、今までブランドを意識したこともないが、
店の一押しなら、さぞいいものだろうかと足を止めたら、
見知らぬおじさんに声をかけられた。

「これ美味しいのよ」

お酢の瓶の一つを指差す。

「ホラ、(美味しいから)賞もとってるのよ」

私に見るように促す。
愛想笑いを浮かべてのぞき込むと、さらにプッシュして来られた。

「一度買ってみ、美味しいから」
「僕はね、別に(お酢のメーカーの)営業じゃないのよ、良いものをお勧めしてるだけ」
「ホントおすすめ、使ってみたらわかる」

一体どうしたことであろうか、
どうして私に酢を試させたいのであろうか、
おじさんは一歩も引かない。

「今日は、買う予定じゃないから・・・」
「きっかけだと思って。 使い良いよ、本当に買って後悔しないから」

私が戸惑っていると、そこに通りがかった品の良さそうなマダム。

「これ、本当に美味しいわよ」

貴女もか!

「これホンマ美味しいなぁ?」
「うん、美味しいねぇ」

私は二人に挟まれてしまった。 
多分見知らぬ者同士の二人が、なぜこんなに意気投合しているのか、
・・・そしてその二人から酢をプッシュされるという、何このポジション。
「これ賞を・・・」何度目かのプッシュ攻勢に、私はいっそ買ってしまうか、と諦めかけた。
その方が面倒がない。
私が買えば、「良いことをした」と思うであろう、二人の顔も立てられる。

・・・だがちょっと待て、私は酢を買いたくないんだよ?

「瓶が重いから、今日は買いません。 いいモノお勧めしてくれてありがとう」

遂に強行突破を試みた。
一気に言って、次の言葉を聞く前に、その場を離れた。

離れてから天井を仰いだ。

善意に基づいた(と、推察される)押し売りは、とても苦手だ。

多分、・・・本当にあの人たちは良かれと思ったんだろう。





分かっているんだ。
いろいろ投影しちゃうんだ私は。





・・・だけど。
思い返すとほんの少し、

あのお酢はそんなに美味しいものだったんだろうか?なんて気持ちも、残っていたりする。





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最終更新日  2016.12.25 00:52:37
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