『みずうみ』 いしし しんじ
【本日の一冊】みずうみひとつだけ、教えてくれ。今日は、何月、何日だ?伸び縮みする時間の中で、渦巻き、落ちていく―2年ぶりの長篇小説。本書は、これまで実在の場所が特定される小説は書かなかった著者が初めて具体的な地名を書いている、というので購入してみたのですが、地名だけでなく、個人名もバンバンでてきます。 (名前こそ出さないもののブラッド・ピット夫妻も登場!)しかも「慎二」「園子」…って、著者と奥さんの名前!?気になったので調べてみたら、第一章(みずうみの村の話)執筆後に、実際に著者夫婦に起きた出来事が第三章(慎二、園子、ボニー、ダニエルの話)で扱われているようです。第二・三章が第一章と趣きが違うのも、そういう背景にあるのかもしれません。私小説的な第三章を含んだ本書、満ち引きする水のイメージの中に「生命」を感じる一冊でした。が、私としては第一章のような雰囲気が好きなので、あまり作風が変ってほしくないような気も。次の作品が待ち遠しいです。