『裏庭』 梨木 香歩
【本日の一冊】裏庭出会いは、人を豊かに成長させる。とりわけ、自分自身との出会いは。昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた──教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。よかった!「裏庭」の世界は大人になりつつある少女の心の世界とでもいえようか。現実の世界では感情を抑えて生活している照美の自分でも気がつかない感情までもが、いろいろな形になって現れてくる。≪これからは、もう誰にも『じゃあ、どうしたらいいの?』ってきけないんだよ≫これが大人になる一歩なのかもしれない。自分は親とはまったく別個の人間なのだ、と理解する瞬間。寂しさと解放。自らの意志と行動…読みやすい文章の中に、親子の関係や死生観、存在の意味や価値観などの深い内容がふんだんに盛り込まれている。小学校高学年~中学生くらいのお子さんにおすすめ。そして、もちろん大人にも意味のある一冊だと思います。