『千年樹』 荻原 浩
【本日の一冊】いじめに悩む中学生の雅也がくすの巨樹の前で自殺を考える「千年樹」。タイムカプセルを埋めようとした幼稚園児の雅也と、こまどり組の十七人が、木の下からガラスビンを発見する「瓶詰の約束」。くすの木の下で男を待つ女が、かつて同じ場所で男を待ち続けた女と出会う「梢の呼ぶ声」。木を上司や生徒に見立ててナイフで切り刻むのが日課の中学教師と、過去理不尽な切腹を命じられた男の運命が交じり合う「蝉鳴くや」。人を殺そうとしていたヤクザを昔ここで人を殺した盗賊の運命が救う「夜鳴き鳥」。ドライブ中偶然巨樹を発見した家族の前に150年前の間引きの風習と母の苦悩が蘇える「郭公の巣」。祖母の初恋を知った孫娘の共感を描いた「バァバの石段」。市役所職員となった41歳の雅也が、かつて自殺を試みたくすの木の伐採に立ち合う「落枝の怒り」。千年間生き続けた一本のくすの巨樹。木をめぐる人間たちのドラマが時代を超えて交錯する。