『西郷どん』感想 第40回 ~困難なときに互いに助け合うのは、やはり吉之助と一蔵でした
2018年NHK大河ドラマ 『西郷どん』 。第40回の部分的な感想です。物語が明治新政府の時代となり、産業も軍事力も遅れている日本が列強諸国に追い付いて、世界の一等国となるための政治の苦悩が描かれています。またオープニングのタイトルバックも再度変わり、トメテロップが大久保利通を演じる瑛太さんになりました。瑛太さん、トメにふさわしいすごい存在感です。それと今回は前半で、西郷隆盛(鈴木亮平さん)が大島から引き取った息子の菊次郎少年に、新しい時代が来た、これまでの厳しい身分の区別もなくなるからどこでも好きなところに行ける、と語る場面がありました。 今はうんと学んで己を磨き、自分が何をしたいかを 時をかけて考えればよい自分が何をしたらいいのか、どう生きたいのか。まだよくわからない菊次郎少年への隆盛の言葉は、いつの時代の若者にも通じるいい言葉で感動でした。明治3年(1870)12月、岩倉具視と大久保利通が勅書を携えて、鹿児島城の島津久光のもとへやってきました。勅書には、久光はすぐに東京へ上り、政府に力を貸すようにとありました。しかし久光は病気のフリをして自室にこもってしまいました。詔勅を賜ってまで久光を東京に呼ぶ狙いは何かと、西郷隆盛(鈴木亮平さん)は大久保利通(瑛太さん)に問います。利通は、新政府は深刻な資金難で、今全国の藩がバラバラに行っている地方の税の徴収権を手に入れたい、そのために日本全国の藩を取り潰し、政府が税を一手に集める仕組みを作りたい、と隆盛に説明しました。(廃藩置県)とはいえ藩を取り潰すとなると反乱が起きることも想定されるという弟・西郷従道(錦戸 亮さん)の意見を聞き隆盛は、各藩から精兵を集めて天子様の軍とし、反乱を起こさせないようにしてはどうかと考えました(御親兵)。そのことを皆に伝えると「天子様を守るのが御親兵で、民を守るのがポリス」、新しい侍の生き方が見つかった皆は武術の鍛錬に気合いが入りました。仮病を使って動こうとしない久光を利通は説得しますが、いまだに自分のほうが立場が上であると思っている久光は説得に応じず利通に下がれと命じます。そんな久光に利通は冷静に、今の自分はもう島津家の家臣ではなく天子様に仕える身であると伝え、久光の下座にはつきませんでした。さらに利通は久光に、新政府には要職も用意してある、これが自分の恩返しだと伝え、別れ際に久光を国父様ではなく「島津久光様」と呼び、久光に新しい時代が来ていることを知らしめて退室していきました。明治4年(1871)2月、隆盛は熊吉(塚地武雅さん)を連れて上京しました。大勢の人々が目まぐるしく行きかう新しい大都市の東京に、鹿児島しか知らなかった熊吉はただただ驚いていました。隆盛が若き頃、島津斉彬に付いて江戸入りしたとき(第9回)と同じですね。新政府には新しい国造りのために、やることが山ほどありました。伊藤博文(浜野謙太さん)は新しい貨幣の準備を進め、後藤象二郎は造船、大隈重信は鉄道、江藤新平は法整備と、それぞれに仕事を進めていました。新しい国造りのための仕事は、薩長と土肥の熾烈な主導権争いでもありました。廃藩置県に備えて隆盛がやろうとしている御親兵の編成に対し、賛同してくれる者もいれば、兵に金をかけるよりも産業にと反対の者もいました。金がない、だからこそ全国から税を集めるためにも早く廃藩を、その実現のための御親兵は最も金をかけるべき、反乱の備えをさせない迅速さで断行すべき、と大久保利通は力説します。それでも反論は出て、一丸となれない新政府を利通は歯痒く思いました。その後、新政府は鹿児島を筆頭に藩士たちを次々と集め御親兵を発足、政府は8000人からなる軍隊を抱えることになりました。鹿児島から上京した藩士たちは皆、散切り頭になっていました。自分の頭をみんなが注目しているって喜んでいる桐野利秋クン、可愛い。御親兵も揃い政府内ではいよいよ廃藩置県に向けて動きだすかと思ったら、急いで事を起こせば反乱になる、戦をすればまた金がかかって政府が潰れる、そんな意見でまた話が振り出しに戻りました。「金がないなら今すぐ政府役人の給金を減らして質素倹約に勤めればよい。」役人たちの日頃の贅沢三昧を快く思っていなかった隆盛がそう意見すると、役人たちは皆黙りこくってしまいました。その隆盛は会議等では握り飯の手弁当持参で来ていました。隆盛の質素倹約の行動は贅沢三昧の周囲を意識してやっていたことでした。ある晩、自宅にやってきた利通に隆盛は、自分は贅沢をするために東京に来たわけではなく、一蔵どん(利通)と一緒に政治をやりに来たと言いました。そんな隆盛に利通は、贅沢は列強諸国に舐められんためにやっていること、この国を早く世界の一等国にしたい、これは100年先の民の暮らしを考えてのこと、と自分の思いを述べました。政府の他の役人たちと考えが合わず、自分は役割をどう果たしていったらいいのかと、隆盛の心は晴れません。若さぁ(隆盛)が大好きな熊吉はその気持ちを察して慰めてくれます。大久保利通は廃藩を一刻も早く進めるために、木戸孝允(玉山鉄二さん)を密かに自宅に招き、協力の根回しをしました。今一つ煮え切らない木戸に利通は、このままでは土佐と肥前に主導権を取られる、そうなると他の改革にも遅れが出る、と強く協力を要請しました。(このシーン、ろうそくの光と玉山さんと背景の模様が素敵で思わずウットリ)そして数日後、天子様から詔勅が出て、いよいよ廃藩置県が実行へとなったときでしたが、利通たち薩長側が自分たちの賛同もなく強引に事を進めたことに土肥側の江藤新平(迫田孝也さん)たちは怒り、自分たちはこの政府を辞めると言って出ていこうとしました。木戸は、御親兵の指揮を執る西郷隆盛がいればこその大久保利通への協力でした。しかしその隆盛が会議の場に姿を見せず、政府内はあわや分裂か?と思ったそのとき、隆盛は「御親兵の調練を見ていて遅れた」と言いながらやってきました。この政府を辞めると出ていこうとする土肥側の者を、利通は辞めてもらって構わないと言いますが、隆盛は引き留めました。「藩が無くなった後も(この政府に)行く末を任せられると人々に信じてもらうためには政府内で分裂してはいけない、御親兵も自分たちを信じて集まっている、自分たちの肩には戊辰戦争で亡くなった8千の魂が乗っている、だからもう一度存分に話し合おう、お頼みします」--そう言って彼らに頭を下げました。そして話はまとまり、廃藩置県の断行が決定しました。会議の後で隆盛(吉之助)と利通(一蔵)は互いの心の内を語り合いました。隆盛は利通に「迷っていたがもう決めた、おはんがしようとしている政を思った通り存分にやればいい、おはんが抱えきれないものはおいが抱える。」若い頃からずっと吉之助が思った通りに行動してこれたのは、親友の一蔵がそのたびに陰ながらずっと吉之助を支えてきてくれたからこそでした。これからは一蔵が思う通りに動いて自分が支える番、そんな思いでしょうか。吉之助が手渡してくれた質素な握り飯は熊吉が作った故郷の薩摩の味。「うんまかぁ」と二人で握り飯をほおばり、互いの友情に涙していました。