大河ドラマ『いだてん』第8回~ストックホルムに行く二人を送る全ての人々の思いに感動した神回でした
2019年NHK大河ドラマ 『いだてん~東京オリムピック噺』 。第8回の部分的な感想です。この回はストックホルム五輪に行く金栗四三と三島弥彦に関わる人々が、彼らの名誉ある旅立ちをそれぞれの思いをこめて送る回でした。四三の兄・実次は弟のためになんとか大金を工面して上京。そしていざ本番が近づいて弱気になりかけた弟の四三を、昔と変わらず叱り飛ばして激励しました。柔道家の徳三宝をはじめ東京高師の皆は街に出て、五輪に行く費用の募金を人々にお願いし、さらに全国の師範学校にも呼びかけて募金を集めました。そして32分07秒からの四三と弥彦が出立するシーンでは、物語の感動や見ごたえがますますパワーアップでした。見送る東京高師の学生たちや先生方が四三と共に学校から新橋駅まで鳴り物を鳴らし大声で歌いながら賑やかに歩き、道行く人々も盛大に彼のストックホルム行きを祝いました。弥彦のほうは天狗倶楽部の皆(及び弥彦の女性ファン)がこれまた華やかに賑やかに彼の出立を祝いました。特に35分57秒から白石加代子さん演じる三島家の母上・和歌子様が登場してからは、これが今回の最大の見せ場!というのをひしひしと感じました。前回、弥彦は「母上は兄上だけが大事なんだ」と悲しんでいましたが、ラストの予告篇では母・和歌子は弥彦を駅に見送りに来ていました。ふつうならこれで「思いがけない展開」という部分がなくなり、見たときの感動は減ってしまいます。ところがいざ放送を見てみると、感動が減るどころかさらに深い感動があるではないですか。白石加代子さん、本当に素晴らしい演技力です。金栗四三(中村勘九郎さん)の兄・実次(中村獅童さん)は渡欧に要る大金を工面し、弟がお世話になっている方々への挨拶を兼ねて上京してきました。でも一方で徳三宝(阿見201 さん)をはじめ寮生たちで街頭募金をし、さらに全国の師範学校からも募金があり、その総額がなんと1500円になりました。困難なときの友情、師範学校というヨコのつながりに感動でした。どの金をどう使うかで悩んだけど、福田の提案で、実次は用意してきた1800円のうち、300円だけ出すことで話が丸く収まりました。翌日、四三は実次を送りがてら東京見物に浅草へ連れ出しました。凌雲閣の上階から遠くの景色を眺めたとき、四三は遠い異国で走ることに急に不安になってしまい、その思いを兄の前で口にしてしまいました。そんな四三を実次は思いっきり叱り飛ばしました。自分を育ててくれた兄から叱咤激励され、四三は少し心が落ち着きました。でも同時に、スヤが間もなく嫁入りをする話も聞くことになりました。もうここで帰ると市電に乗った兄・実次は別れ際に、嘉納治五郎の『順道制勝』の言葉を四三に送りました。(この言葉は 第3回 に出てきました)出立の日がいよいよ近づき、四三はストックホルムに持っていく特注の足袋を受け取りに黒坂辛作(ピエール瀧さん)のところに来ました。そのとき勝蔵(阿久津慶人くん)から風呂敷包みを渡され、その中には辛作が四三のために作ってやった、日の丸がついた運動着が入っていました。涙ながらに礼を言う四三。そしてここにも四三を陰で支える男が一人がいました。一方、弥彦を送り出す(と言っても弥彦はまだ家族には伝えていない)三島家では、母の和歌子(白石加代子さん)が一人サンルームで「弥彦は三島家の恥じゃ」と言いながら、一心に何か縫物をしていました。(ちらりと映った裁縫箱が金銀の漆で、高級感あふれる小道具でした)出立の2日前、東京高師の学生寮では四三を送る壮行会が開かれました。皆さんへの挨拶の後、何か歌うよう言われた四三は、唯一心に残る女性である故郷のスヤのことを思いつつ「自転車節」を力いっぱい歌いました。そのころ春野スヤ(綾瀬はるかさん)は嫁ぎ先となる池部家へ向かっていました。(綾瀬はるかさん、日本の花嫁衣装がすごく似合って綺麗です~)明治45年(1912)5月16日、いよいよ迎えた出立の日です。金栗四三と見送りの大行列は道中賑やかに囃し立てながら徒歩で新橋に来ました。新橋駅では四三を見送ろうと黒山の人だかりで、徳が四三を肩車します。集まった人々は日の丸の小旗を振り、四三に惜しみない拍手と声援を送りました。一方、弥彦は天狗倶楽部の仲間たちと共に車で新橋駅に来ました。(彼のファンの女性たちは彼を追っかけ or 入り待ちしていました)出ました! 天狗倶楽部の応援演武です。第1回のときと違って上から見るアングルがあったり、羽織り袴で手に下駄を持って鳴らしたりすると、印象がまた全然違ってきますね。見送りの人々は駅のホームにも集まり、出立する二人を盛大に見送ります。吹奏楽隊の演奏で皆で『敵は幾萬』を歌い、声を限りに声援と万歳を送りました。いよいよ汽車が出発しようとしたその時、弥彦の兄・三島弥太郎(小澤征悦さん)と母・和歌子と女中のシマ(杉咲 花さん)が見送りに駆けつけました。弥彦にとってはまさかという思いですが、兄から「母上にちゃんと挨拶せんか!」と叱られ、急ぎ乗降口に向かいました。乗降口の扉を開けた向こうには息を切らして駆けつけた母上がいました。弥彦が「精いっぱい闘ってきます!」と挨拶すると、母は弥彦に「当たり前じゃ。おまんさぁは三島家ん誇りなんじゃから。」と言葉をかけてくれ、そして・・母は弥彦に日の丸が縫い付けられた運動着を渡してくれました。そう、母は弥彦の気持ちをわかっていて、弥彦のために手づから縫ったのでした。そして母は弥彦に「体ば大事にしやんせ!」と。汽車が出る時間になり、母はホームに戻されました。動き出した汽車を母は幾度も弥彦の名を呼びながら息を切らして追いかけました。母は兄と同じように自分も愛してくれていたのだと知った弥彦は、汽車の窓から身をのり出して「行ってきます」と叫び、汽車の中で嬉し泣きしました。シベリア鉄道に乗るために、汽車は新橋駅から福井県の敦賀に向かいます。その汽車には各新聞社の記者たちが同乗していて、四三と弥彦は汽車の中で取材を受け、後日それが記事になりました。しかし口下手な四三は記者たちが誘導した内容がそのまま書かれてしまい、それは四三が思うところの『順道制勝』とは真逆のものでした。さて敦賀行きの汽車の中にはなぜか可児先生が乗っていて、さらに同じ東京高師徒歩部の橋本君や野口君たちが乗っていました。聞けば彼らは四三をちゃんと見送りたくて思わず汽車に飛び乗ったということだったのですが、でも可児先生だけはどうやら事情が違うようで・・・?一方この汽車に乗るはずだった嘉納校長はホームで「汽車を止めろ」と叫んでます。(三島家母子の感動物語のヨコで、こちらはこんなモメ事をやっていたとは…)二人のストックホルム行きを歓喜で見送る人々(左)と、汽車に乗れなくて呆然とする嘉納校長(右)。(まさか可児先生が自分が行きたくて出し抜いた?)一つの画面の中で、左右でまったく違う世界が描かれていて、構図というかこのドラマの表現方法に魅入った場面でした。