大河ドラマ『いだてん』第31回~ロサンゼルス大会では日本の水泳チームが大活躍、人種を超えて人々は感動し、現地の日系人は誇りを回復しました
2019年NHK大河ドラマ 『いだてん~東京オリムピック噺』 。第31回の部分的な感想です。オリンピックでの日本の水泳は、2000年代に入ってからメダルの獲得が増え、世界レベルでもけっこう強くなってきた印象が私の中にあります。しかしそれ以前では、水泳は日本人はどうしても体格で欧米の選手にはかなわない、特にパワーで泳ぐ自由形は日本人は勝てないと私は思っていました。なので『いだてん』のドラマで、1932年のロサンゼルスオリンピックでは、日本の水泳がこんなにも強かったのかと驚きの連続でした。そしてこの水泳で日本チームが大活躍したことによって、アメリカ人は日本人というものを見直し、この地に移民してからずっと白人から迫害されてきた日系人たちは、ようやく日の目を見ることができました。迫害される苦しみや辛さを知らない日本人選手団の皆は、日系人たちが必死に喜びと感動を訴える意味がわからず、初めはキョトンとして聞いていました。しかしたとえ彼らの思いがわからなくても、自分たちが頑張ったことでこんなにも人は喜ぶのだ、という実感はあったと思います。日本チームの大活躍に、人々は国も人種も超えて感動し、感動した人はこれまで見下していた日本人や日系人に、素直に感動の言葉を伝えました。その感動の言葉は、これまで白人に声すらかけてもらえなかった日系人にとって、信じられない出来事でした。これまでずっと辛く悲しい思いをしてきたから、それは自分が日本人/日系人である喜びと誇りに変わりました。田畑政治(阿部サダヲさん)が「日本を明るくするために全種目で金!」と描いた思いは、もっともっと広い輪になって人々を明るくしたようでした。久々にご登場の、熊本の金栗(池部)四三(中村勘九郎さん)一家です。昭和7年(1932)8月9日、ロサンゼルスオリンピックでは女子の平泳ぎで前畑秀子(上白石萌歌さん)が出場していて、一家は皆それぞれにラジオに耳を傾けています。義母の幾江(大竹しのぶさん)は「おなご一人に戦わせて、なんばしとるか、男は!」とご立腹です。(笑ったけど、この時代にはそういう無理解があったのですね)ゴール直前のデッドヒートの末、1位はオーストラリアのデニス、そして前畑秀子(上白石萌歌さん)はわずか0.1秒の差で2位の銀メダルとなりました。死力を尽くした戦いの後、憧れの先輩の鶴田がプールから引き上げてくれ、コーチ陣も仲間の皆も駆け寄ってくれ、前畑の大健闘を祝福してくれました。水泳陣の快進撃はまだまだ続き、8月12日の男子背泳ぎ100m決勝ではナント、清川が1位、入江が2位、河津が3位となり、金銀銅を日本が独占しました。表彰台を独占する3つの日の丸。観戦に来ていた日系人たちはふだん肩身の狭い思いをしている分、日本勢の大活躍は彼らにとって最高の贈り物であり、嬉しくてたまらないことでした。自然と国歌の「君が代」を声に出して皆が歌い、拍手も鳴りやみませんでした。試合後に録画を見直していたとき、IOC会長のラトゥール(ヤッペ・クラースさん)は嘉納治五郎(役所広司さん)に、日本の水泳が急に強くなった理由を尋ねました。嘉納はラトゥールに「日本には400年前から続く伝統的な泳法がある」と説明するとラトゥールは是非それを見たいと言い、ご機嫌な嘉納は「皆様にもお見せしましょう」と勝手に決め、閉会式のエキシビションで日本泳法を披露することになりました。日本の男子水泳の快進撃はまだ続き、1,500mでは北村が金、牧野が銀となりました。そして明日は200m平泳ぎで、出場する小池礼三(前田旺志郎さん)は緊張で全然眠れなくて、先輩の鶴田義行(大東駿介さん)に絡みます。ところで昨年『西郷どん』を見ていたので鶴田のこれまでのセリフで鶴田が鹿児島出身なのはすぐにわかりましたが、背景に「敬天愛人」を置くとはニクイ演出ですね。そして迎えた8月13日の200m平泳ぎ決勝では、鶴田が金メダルを獲りました。鶴田は、若い小池を勝たせるための練習台にと言われてこれまでやってきました。しかしこの決勝では、鶴田は小池に勝ちを譲りませんでした。鶴田の苦悩が誰よりもわかる高石勝男(斎藤 工さん)は鶴田の金メダルが嬉しくて、服のままプールに飛び込んで鶴田の勝利を讃えました。全ての競技が終わった8月14日のエキシビションでは、日本男子のチームは会場で日本泳法をいくつか披露することになり、観客は拍手と総立ちで彼らを迎えました。恰好も日本男子らしい褌になり、様々な泳法に観客は喜び拍手喝采でした。日本泳法は欧米の選手たちに、自分たちも学ぶ意義があると感じさせるものでした。そしてセレモニーの最後には各国の選手たちも一斉にプールに飛び込み、どの国の選手も互いに笑顔で健闘を讃え合う、感動のフィナーレとなりました。この脚本と演出、最高です! ⇒ ⇒ 大河ドラマ「いだてん」公式サイト ロサンゼルスオリンピックは大成功のうちに幕を閉じ、いよいよ帰国となりました。選手村を出るときに世話になった人たちにそれぞれが挨拶をしていきます。まーちゃん(田畑政治;阿部サダヲさん)は守衛のデイブ(アントワン・Sさん)に呼び止められ、この言葉の意味を訊かれました。大会中はこの言葉を気負っていたまーちゃんでしたが、試合を通して様々な体験をした今は「意味はない、戯言」という気持ちになっていました。そしてこの紙の下には、オリンピックの理想が書かれたボードがありました。8月15日、ロサンゼルスを出る選手たちを乗せたバスは港に向かうのですが、その途中の道では日系人もアメリカ人も日の丸を作って選手たちを盛大に見送ってくれました。その時一人の日系の老人(吉澤 健さん)が、どうしても選手たちにお礼が言いたいと無理やりバスを停めました。今まで27年間この地で迫害されてきたけど、今日初めて白人が自分の手を取って「あなた日本人?おめでとう!」と言ってくれたことの喜びを切々と語りました。この地で暮らしてきた日系人には、この老人の喜びと感動が痛いほどわかります。日本選手たちの大活躍で、自分が日本人であると、堂々と言えるようになったのです。そして皆が口々に「俺は日本人だ!」「私は日系人だ!」と日の丸を手に叫びました。人々の歓喜の叫びと万雷の拍手と万歳の声を土産に、日本選手団は帰国していきました。オリンピックでの日本選手団の大活躍は、熊本のこのお方の目を覚ましました。久々の冷水浴の「ひゃ~ぁ」(及び、隠し用のニャンコ)でした。オリンピック凱旋列車が東京駅に着き、人々は選手たちを熱狂的に出迎えました。その後、午後2時から日比谷公園の音楽堂で大市民歓迎会が行われたのすが、その時に東京市長の永田の発言で事件が起こったようです。